岩保木水門

岩保木は釧路湿原にほど近い地区の名前です。「イワボッキ」と読みます。アイヌ語で「山の下」を意味するそうな。確かに近くにはさほど高くもない山がある。あたりを流れる釧路川はカヌースポットにもなっているのだとか。
そんなところに新旧ふたつの水門が並んで建っております。これが岩保木水門。遠矢駅前の交差点を曲がっていくとそのうちつきますので、行くのはそんなに難しくありません。
もとはといえばその昔、釧路川が氾濫を起こして困った人々が、治水のために設けたのだそうです。計画当初は材木も運ぼうともくろんでいたみたいです。ところが水門の完成よりも先に鉄道ができてしまって若干アテがはずれたとのこと。テキトーな計画だったんですな。
ともあれ水門の完成によって、海にまっすぐ流れ込む新釧路川ができました。地図を見ていただければわかるとおり、まことにまっすぐな人口河川です。さぞかし洪水も減ったことでしょう。

治水計画の着工は大正10年。完成は昭和6年となっております。およそ10年がかりの大工事。それでできたのが旧水門です。木造の古くさい趣深い建造物ですな。洪水がおきると一週間も水浸しってこともあったそうで、当時の人々はそりゃあ完成を喜んだにちがいありません。なお、新水門の方は旧水門の老朽化を受けて、平成2年に完成しております。ツインタワーです。
さてこの岩保木水門、北海道文化資源データベースを見るとこんなことが書いてあります。

この水門(岩保木水門)は、度々逆流現象が起こり効果的でなかったが

おいちょっとまてこのやろう。つい今しがた「さぞかし洪水も減ったことでしょう」とかワケ知り顔で書いたばっかりじゃねえか。「当時の人々はそりゃあ完成を喜んだにちがいありません」って、これじゃあぬか喜びもいいところだよ!
というわけでなんかイマイチだったみたいです岩保木水門。困ったものですね。テキトーなのは計画だけにしておけばよかったのに。まあそうは言いつつも60年ちかく使用され、今となっては文化資源ってあたり侮りがたいですけれどもね。ちなみに、

釧路湿原開拓史の遺産として、今日、その周辺が釧路川カヌーレジャーとともに、湿原景観公園として注目されている。

ということなんだそうです。ほう。なかなかの観光スポットぶりではないですか。水門のクセに逆流なんかしやがって困ったヤツだと言われつつ、今や立派な観光資源。地元に貢献。やはりものごとは長い目で見なければなりませんな。
でも私が行ったときは完膚無きまでの曇天にして人っ子一人いなかったんですけれども。あたりは見渡す限りの野原で、視界の中に人間の気配なし。生きものといえば鳥が囀りながら舞っていたくらいなもので。
……。
いやーまあその、なんだ。まだ観光シーズンには早いしね。きっと夏にはカヌーの人とか文化遺産マニアとかで黒山の人だかりですよね。そうですともそうに違いない。
ちなみに近くにはムダに広い雄大釧路湿原を望む細岡展望台もあります。車で砂利の山道を40分くらい。細い道なので対面通行は難しいですが、今回は一台もすれ違う車がなかったので問題ありません。展望台の近くにはビジターセンターもあります。駐車場のトイレはたいそうアンモニアくさいです。
久々に実家に帰ってまでなにをしているのやら。