図書館問題

『書店での本の売りあげと、図書館で貸し出される本の定価合計は、ほぼ同額』というのが問題なんだそうです。確かにまあ問題なんだろうなあ、という気はしますが、なんだかゲーム業界で一時期盛り上がっていた中古問題とちょっと似てるような気も。以前はPCゲームのレンタル店というのもあったらしいですが、こっちの方がより近いですかね。

で、お笑いパソコン日誌さんが『図書館で読むような人は解禁されるまで待ち続けるような気がしないでもない。』とコメントされてます。実際そういう人もいるかもしれませんが、待っている間にその本のことを忘れてしまいそうな気もするなあってのが正直なところでしょうか。「そんなに待つくらいなら読まない」って人は結構多そうです。「そんなに待つくらいなら買う」って人も同じくらいいるかも。ちなみに私の場合、図書館はまったくといっていいくらい使いませんから、ほしければ買うし、その時に金がなければ買わないという単純な図式になってますけど。


確かに図書館が売れスジばかりを追いかけるってのは問題アリだと思います。文化なんてものは作ろうと思って作れるもんでもないと思いますが、それにたいして一番意識的でありうるのは公立の図書館(多分一番は大学図書館)なはずで、ベストセラー本ばかり追っかけていてそれが果たせるのかといえばたぶんNoでしょう。もっとも、Hase's Noteに書いてある『新刊書店で動いている新刊書を図書館に置くのはいかがなものか』、『新刊書店で手に入らない物を図書館で借りだすというのが本来の構図』というのはちょっと極端だと思いますけどね。図書館も客引きを考えないと生きていけないってのはそれはそれで事実なんだと思いますし。

でも、不思議なのは今まであんまりこういう話を聞かなかったような気がすることです。図書館ができたのは昨日今日の話ではないですし、昔から新刊書は並んでいたような記憶がかすかに残っています。単に私が知らなかっただけかもしれませんが、「なんで今頃」って印象はぬぐいきれません。
 こうするとどうしても不況ってやつに話がいっちゃうんですよねー。みんなが世知辛くなって、結局そのしわ寄せがモノを作る側にいくってのはよくある話です。こと娯楽に関するモノだとその影響も大きいんだろうなぁと。

出版物に関しては再販制度の話もありますし、なかなか一筋縄ではいかないところもあります。でも、「なんで売れないのか?」ってことは考えなきゃいけないんじゃないでしょうか。それは小説がツマらないせいかもしれませんし、他の娯楽に押されてるせいなのかもしれません。前者であればもっと面白いものを作るのが一番手っ取り早いんですが、もし後者であった場合、これは紙媒体での出版そのものが斜陽産業であるということになってしまうような気がします。

かつてビデオが登場したときに、映画業界で似たようなことがあったように思います。映画会社がどんどん立ち行かなくなって、日本映画はもうダメだー、映画は文化なんだから日本の文化はもうダメになっちゃう!って論調もきっとあったことでしょう。でも今日本に映画を作る人がいないかっていうとそうではないですし、それなりに評価されている作品もけっこうある。それと同じことがこれから出版業界でも起こる。それだけのことなんじゃないでしょうか。

んー、結局傾くときは傾いちゃうんだよって話のような気がする。それはたとえどれだけモノを書く人が多かろうがきっと関係ないんでしょうね。そんな風にして見ていると、図書館側と出版側で争っているのがなんだか内部抗争のようにも見えてしまいます。ちょっと乱暴なくくりではありますが、消費者に本を届けるっていう意味ではどちらも同じですからね。なんだか小さなパイの分捕りあいになってしまう危険性もあるように見えます。本を作って売るのは確かに現状では一番なんだろうけど、もうそこにこだわってばかりいられる場合でもないような。釈迦に説法かもしれないんですが。

なんだかいつものようにとりとめがなくなってしまいましたが、『小説だけ書いてりゃ事足りる』ってことには多分ならないと思います。苦労してるのはきっとどの業界の人も同じなんじゃないかなぁ。同じようなボヤきが、きっといろんなところで洩れていることでしょう。


ロクでもない言い方をしてしまえば、本を読む人ってのは作家の懐のことなんか気にもかけないだろうし、その必要もないんだろうなあ、と思った。