Wizardry

最近、「BUSIN」(PS2)というゲームをやっています。そのおかげでスクリプト書きの方はすっかり停滞気味。困ったもんなんですが、楽しいんだからしかたがない、とでも言いましょうか。
で、この「BUSIN」、サブタイトルが「Wizardry Altanative」です。Wizardry。世界初のRPG……かどうかは知りませんが、Ultimaとならんで、コンピュータゲームの黎明期から非常に多くの人を魅了してきたゲームとして有名です。初代が1981年、Apple2というんですから、足掛け20年になるんですね。
私が始めてWizardryの世界に足を踏み入れたのは中学生のころでした。ファミコン版の「Wizardry2 〜リルガミンの遺産〜」になります。はじめて真っ暗なダンジョンを歩くときの心細さ。蘇生に失敗すると死亡、灰化を経て、手塩にかけたキャラクターが消滅してしまうことすらある緊張感。経験を積み、いつしか歩きなれた道をモンスターをなぎ倒しながらさらに強くなっていくカタルシス。アイテム収集のために来る日も来る日も探索を続け、ようやくお目当てのものを手にしたときの感動。Wizardryのどこがよいかと言われて思いつくだけでもこれだけあります。もう語りだしたら止まらないほどの勢いです。
ゲーム自体は無機質とさえいえるほどそっけなく、自らが操るキャラクターの姿は数字といくばくかのデータによってしか与えられません。しかし必要最低限の情報しか与えられていないがゆえに、ブラウン管の中に自分だけの物語をことができました。今インターネットで検索すると、多くのWizardryのサイトで自作の小説が描かれていることがわかります。そこにはそれなりの理由があるものなんですね。実際私も小説を書いてみようかと思ったこともありまして、今こうやって好きで文章を書いている、その原点がWizardryにあるといってもいいくらいです。
そして今回のWizardry Alternativeですが、それこそ今までにはないという意味でまさにAlternativeです。目的のみが提示されるというのがかつてのWizardryだったんですけれども、今回はその過程にもさまざまなエピソードが用意されています。しかし強いストーリー性を持たせたにも関わらず、まったくWizardryの持つ雰囲気が失われていないんですね。多くは語られないキャラクターたちの世界を想像する楽しさももちろん残されていて、そのあたりのさじ加減はまさしく絶品です。そしてイラストレーターが寺田克哉氏。あの独特の、誤解を恐れずにいえばキャラクターの体臭さえ感じさせるようなタッチのイラストが、世界観にぴったりとマッチしています。重厚で寂寥感の漂う世界の中でもたくましく、軽やかに生きる冒険者たちの存在をしっかりと感じることができる。そんなゲームはそうそうあるものではないでしょう。
ゲームとしては戦闘にFFばりのアニメーションが取り入れられている分、もうちょっと軽快さがほしかったかな?という気もします。が、それも含めてのダンジョン探索と思わせるくらいにしっかりと世界が作られていますね。モンスターを倒して入手する材料から魔法を生成、強化していくシステムのおかげで、ゲーム序盤からアイテム集めの醍醐味も充分味わうことができますし、これは古くからのWizardry好きの人だけで楽しむのはもったいない。今まであの無機質さのせいで敬遠していた方、そもそもWizardryってなに?と言う方にもぜひおすすめしたいゲームです。
発売が昨年の11月だったんですが、年末年始の休みでじっくり取り組んでみたかったなあ。
ちなみに寺田克哉氏はPlayStarionの「探偵 神宮司三郎」シリーズのイラストも担当されています。こちらもストーリーがすっごくいいですよう。特に「灯火が消えぬ間に……」はおすすめです。確か2980円くらいで買えたはずですので、こちらもぜひ。