「情報」をめぐってだらだら書いてみる

書込みの少ない我が掲示板ですけど、題名をつらつらと眺めていたら「掲示板の書込みにタイトルは必要ないんじゃないかなぁ」なんて思ってしまったというのが発端です。だらだら書くぞー。今の掲示板のシステムとして、記事に対するレスをつけられないってのもひょっとしたら題名が不要なんじゃないかと思う原因の一つになってるのかもしれません。メーリングリストなんかだと、Subjectが一連の話の流れをあらわす識別子みたいになるってことがあるんでしょうが、基本的に一話完結になってしまっているあの掲示板では、識別子としての役割ってのはさほど大きくないのかも。それよりはむしろその場で思いついたことを勢いだけで書いてしまうという「ノリ」が重要なのかもしれないですね。それだったら別に「題名」なんて仰々しいものはいらないんじゃないだろうか。特にテーマが決まっているわけでもなく、テーマそのものを提起するところから始まるというありかたなわけですから、そこにかかる制約というのは可能な限り少ないほうがいい。思ったことを書くという流れの中に、「題名をつける」なんていう淀みを発生させちゃいかんわけです。ただ、発散型の表現形態としての掲示板のありかたを考えてみると、これには問題も多いわけでして。どんどんログが流れていってしまうんですね。過去の記事に対するアクセシビリティが非常に悪い。しかも間に別の書込みが入ったりして、話を追うだけでも一苦労です。それを解決するために「レス付け可能な掲示板」ってのがあるんですけど、これも一度爆発してしまうとスレッドを追いかけるのが非常にツラくなってしまいます。しかもウナギの寝床になっちゃいますし。
その回避のために「一行レス」だとか、「レス付けは管理人特権」という掲示板があるのはご存知のとおりかと。もっとも、これには「一行で書きたいことが全部書けるわきゃねえだろ」とか、「俺にだって言いたいことはあるんだ」という問題があるわけです。それで逆に書込みが氾濫してしまうというケースもある。こうなってしまうと逆効果にしかならないんですね。まあ、ここらへんはブレインストーミングのための場である掲示板という視点から見ればあくまでも傍流という位置づけになると思います。で、「誰でもレス付け可能な掲示板」のウナギの寝床化に対する解決策としては「タイトルのみのスレッド表示」ができる掲示板ってのがあります。でも正直なところ、これをやるんだったらメーリングリストを使ったほうがいいんじゃないかなぁ。記事のプレビューができないから、いったいどんな内容の話題が展開されているのかぱっと見ではわからないですし。それだったらそれ向けの機能がついてるメーラーでも使ったほうがなんぼかマシってもんではないでしょうか。
そもそも題名と話題とが全然違うってのは発散型でやってる上ではよくあることですし、それを見越して題名をつけるには未来を見通す目を持ってなきゃいけない。もはや人間技とは思えません。ブレインストーミングってのがちらっと出てきましたが、やっぱりPCの狭い画面の中のさらに限られた場所にしかないブラウザでできることにはやっぱり限りがあるんでしょうね。しかもブレインストーミング会議にはある(はずの)時間的な制約ってのがここにはないですから、話題はどこまでも広がってしまって収束できなくなる。で、まとめができないままにみんないつしかその話題に飽きていってしまって先細りってのがよくあるパターンです。なんの結論も出ないままに自然消滅。なんだか大量消費社会におけるモノの扱われみたいな話ですが、これじゃエントロピーが増大するだけのような気がします。おしゃべりってのは人間の発明した娯楽の中でも5本の指にはいるくらい面白いもんだって話もありますから、それはそれでいいんでしょうけど、経営の効率化という名前の無駄の排除がお題目になっている昨今ではなんかもったいないようにも思えてしまいます。もったいないお化けが出てきちゃうかもしれない。ぽんぽんとみんなが言いたいことを言って、さらにそれをなんとか収束させるような方法ってのはないもんかなぁ、というわけなんですが、やっぱりこれって難しいんですよねえ。まとめを作るってのはものすごい労力のかかる仕事なわけで、やらないですむなら誰もそんなことはやりたくないです。しかも普通の会議と違って話題はひどく雑多なんだから、それを一人でやろうとしたら死んでしまいますよ。とはいえ、所詮「おしゃべりの場」なんだから別にいーじゃんって言ってしまえばそれまでなんですが。ただまあ、そこからいくばくかであれ情報を吸い出すことのできる人ってのがいわゆる「デキる人」なのかもしれないです。S/N比が非常に低い(ノイズが多い)「おしゃべり」の中から、必要な情報を抽出するだけのフィルタを持ってるってことですからね。一生のうちでどれだけ使うのかわからない「情報」を山のように持ってる人がもてはやされるような時代でもあることですし。
で、逆に言えばそうすることに慣れてないごく普通の人が「おしゃべりの場」をどんと提示されても、きっと困惑するだけで終わっちゃうでしょう。特にインターネットな世界では、情報ってのは藁の中にある一本の針みたいなものです。「調べろ」って言われてどうしたらいいのかわからないってのは実はこういう状況のことも含んでいるのかもしれません。
よく言われることですけど、理系な人は些事にこだわりますから、「こうするためにはこうしたらいいよ。でもこういう場合もあるからそういうときにはこうしてああいう場合にはどうのこうの。でもそれはこれじゃできないからそのときにはこれを使ってああしたこうした。で、あとは自分で調べてみてね」という言い方をよくします。で、インターネットではこういう人たちがごろごろしてる。やってられないっちゃやってられません。そうやって普通の人がいわゆる「教えてクン」になっちゃう。理系の人、ないしは技術者が初心者に対して閉塞的に見えるのはそういうのが理由になってるのかもしれません。とすると、インターネットを使っても文系と理系の壁はなくならないってことになってしまうという。なんかどんどん話がワケのわからない方向に進んでしまいました。
 結局のところ、時間に制限のない発散型の会話ってのはどうしたってまとめることが難しくなってしまうってことでしょうか。こじつけると「だから掲示板の書込みに題名をつけるのは無理なんだ」ってことになるんですが、まあそれはとりあえず置いといて。で、今のところはノイズの多い「おしゃべり」の中から「情報」を抽出できるフィルタを持ってる人が「デキる人」なんだっていう風潮があるように思います。この流れはもうしばらく続くんじゃないでしょうか。ただ、これってすごく内向的なことなんですよね。それでいて一方にはコミュニケーションというのがすごく重要視されてるっていう流れがある。これの発露が掲示板とか電子会議だとか、メーリングリストだとかいうやつです。外部に現れないコミュニケーションとしてはeメールがその最たるものでしょう。
ここにひとつの循環があるんですね。コミュニケーションとしての「おしゃべりの場」と、そこから必要な情報を抽出するための「フィルタ」、そしてその情報を取り込むための「個人」、そして個人がためこんだ「情報」は「おしゃべり」の中に紛れこみつつ「おしゃべりの場」へと再び流されていくわけです。元情報の供給源はTVや雑誌などのメディアであることが多いようですが。で、「おしゃべりな人」が珍重されるという現実がその循環速度をまた速めていくわけですね。これはいったん乗り遅れたらもうダメです。そういう人たちは「なーんかあの人がいると場がシラケるんだよねー」とか言われて疎外されてしまう。この循環の中から、情報供給源たるメディアにフィードバックされる情報ってのももちろんあるんですが、それはまだまだ少数のように思われます。これが「消費者の声を反映した製品」とかいうものの正体のような気もしますけどね。ただ、将来的にはこれが当たり前になるんじゃないでしょうか。そうなると情報ってのは「個人」の中にためこむだけのものじゃなく、外に向かって発信してこそのものになる。一時期Webページを立ち上げることが「世界に向かって情報発信!」なんていわれてたことがあって、モノ笑いのタネみたいになってたんですが、もう一度そのフレーズがカタチを変えて戻ってくるような気がします。ほら、ちょうど「マルチメディア」が「メディアミックス」に名前を変えたように。
そうなると「情報を持っている人」ではなく、「情報を伝える人」がエラい、という流れが一般のレベルでも広がっていくんじゃないかと思うんですよね。それはつまり「ノイズの中から情報を拾い上げて、それを自分なりの表現方法を持って外に伝える人」のことです。言ってしまえばアーティストなる人たちの自己表現みたいなもんなんですが、外部からの情報を消化しているという点で、若干異なる面があります。「創造」ではなく「情報の加工」とでも言えばいいんでしょうか。「柔軟な発想のための思考法」はそのための第一段階なのではないかと、そんな気がするんですよね。現状の掲示板とかはここのレベルでのひとつのシステムであるのにすぎません。ここからは「情報をどうまとめるか」、「それをどう伝えるか」のための方法論がどんどん出てくるようになるはずです。これはもうすでに一部の人が実践しているとは思うんですけど、それがごく当たり前のレベルにまで落ちてくる、ということです。
じゃあそれを実現するためにはどういうシステムが必要なのか、ってところが今ナレッジマネジメントとして出てきているものなんでしょう。現状では検索と生データの提示だけで、まだまだ「情報加工」というレベルのものではありませんし、これはコンピュータがもっとも苦手にしている分野だとも言われています。力技で解決するのであれば、「データベースを活用するためのデータベース」の整備かな、って気もしますけど、さてどうなりますことやら。んー、やっぱり掲示板の運営って難しいんだなあ。つーかあんなに書込みの少ない掲示板の持ち主がなに偉そうなこと言ってんだって感じですけど。