「住基ネット侵入実験」をめぐる総務省と長野県の知られざる暗闘(Internet Watch)

なんだかため息の出るような記事だ。
いまさら「内輪もめ」なんかしてる場合じゃないだろう。もし住基ネットがアンセキュアだったとして、一番被害を蒙るのは国民である。役人ないし役所のメンツではないはずだ。
総務省だろうが長野県だろうが国民から見れば同じ「役所」である。とすればハタから見ればこれはただの「内輪もめ」にしかならない。技術的側面だけでなく、ソーシャルエンジニアリングなどのことも考えれば、住基ネットが安全だと信じることは難しかろう(担当職員が対ソーシャルエンジニアの訓練を受けたという話は寡聞にして聞いたことがない)。そこを認識した上で、いかにセキュリティを高めるかに砕身するのが役所/役人の仕事なのではないか。
くわえてこの記事の書きぶりにも不満がある。特にシメの「総務省側が今後、どう巻き返すのかが注目されるところである。」というくだりはいただけない。なぜこの醜悪な内輪もめを弾劾しないのか。長野県と総務省の争いを描くだけでは、ただのゴシップ記事ではないか。繰り返すがここで天秤にかけられているのは長野県や総務省のメンツなどではない。国民の個人情報である。そして情報はいったん漏洩したが最後、二度と取り返すことはできないものなのだ。それを考えればこのように高みに立ったがごとくの書き方はできないはずではないのか。
確かにコトの内情をここまで詳らかにした手腕は評価されてよいものだと思う。だが情報漏洩に対する危機感の感じられない記事になってしまったことはとても残念なことだ。そしてなんとしてでも情報を守るべき立場にいる役所/役人がその本分から乖離し、さもしいメンツ争いを繰り広げていることを思えば、やはりため息をつくほかない。そう思うのである。