重心移動

なんか2週間に一回ってペースになってるな。そんなつもりはなかったのだけど。とかいいつつ、プラハ・フィルに行くために休むので、来週書かないことは確定です。
だいぶ慣れてはきたものの、まだまだって感じの今日この頃。とりあえず音を鳴らすタイミングはへろへろです。ただ鳴らしてるだけで、タップと呼ぶには程遠い。
でもって、基本のステップにちょっと調整。もっと体の中心に近い位置でタップをするようにとのことであります。あまり遠すぎるとバランスが崩れるし、なにより重心の移動がうまくいかなくなるそうな。ふむん。
しばらく習っていて、どうやら重心の移動がとても大事であるようだ、と今は思っている。必ずどちらかの足に体重がかかっているようにするのがキモなのである。すなわち片足で立てるかどうかということ。ところがこれがなかなか難しい。右足左足とやっているうちについバランスを崩し、壁に手をついたりしてしまう。はうあー。そうか、それで初心者は壁際に立たされるのか、とそのたびごとに思い知る。
しかしながら単なる重心移動のどこが難しいのか。おそらく普段の体の使い方がなかなか抜けきれないせいであろう。普段の体の使い方とはなにかといえば、人間がどう歩いているか、である。歩くという行為は、おそらく人間が一番慣れ親しんだ重心移動を伴う動作だからというのがその理由。
軽く足を開いて立っている場合、重心は両足のちょうど真ん中__背骨の真下にある。では歩くときはどうか。右足から歩き出すとすると、重心は左の足裏に……と思えばさにあらず、やはり重心は背骨の真下あたりにある。左の足裏に重心があるとすれば、それは歩行ではなく、単なる片足立ちにしかならないからだ。そこからそろりと右足を出す……まるで能や狂言の世界である。そんな歩き方をする人はいませんな。
ともあれ、重心は背骨の下にありつつも前に進むために前方に移動してゆく。しかしながら右足は空中にあり、左足はすでに重心の後方に行ってしまっている。これはバランスの取れた状態ではなく、そのままだと前のめりに倒れることに。大変だ。しかし倒れる寸前に右足が地面を捉えるのだ。間一髪で転倒を免れ、めでたしめでたし。そして次は左足を上げて前に……。
どうにもわかりにくい書き方だが、かいつまんでいうと人間は倒れながら歩いている、という言い方ができる。これを『動歩行』というそうな。ロボット工学でよく聞く言葉である。すなわち、''人間が普通に歩くときには、どちらの足裏にも重心がない場合がある''、ということだ。ああやっとたどり着いた。これが言いたかったんだよ。
しかしその『動歩行』にあまりにも慣れすぎてしまっているせいで、ダンスのステップが上手くできずにバランスを崩してしまうことになる。ついバランスを崩してしまうというのは、きちんと足裏に重心がないせいだ。そしてバランスを崩してしまうと、ステップとステップの間にタメが作れなくなる。自然、リズムは狂う。ご愁傷様でした。はいもう一回最初からやり直し。
というわけで、踊る際にはつねにどちらの足裏に重心があるかを意識する必要がある。そしてわざわざ意識せずともそれができるようになったときに、ようやくそれらしくカッコがつくのだろう。……と言葉でいうのは簡単だが、そうやすやすとできるのであれば苦労はしない。とりあえずゆっくりとステップを踏みつつ、体に叩き込んでゆくしかないわけだ。つまるところ練習あるのみ、という当たり前の結論にたどり着くのであった。
でもこの「当たり前」がなぜ当たり前なのかがわかる、ってのはなかなか面白いもんだなあ、と思う。いかがか。