ワンダの日記

ワンダと巨像」より。ネタバレを含む。

Intermediate

気がつくと崩れた像の間に立っていた。日の光を背にすると、奧の暗がりにまだそびえ立っている残りの像が見える。気がつくとずいぶん少なくなっていた。残りは5体。それだけ倒しちまえば終わりだ、と思ったところで俺はふと考えた。
終わる?なにが。
ドルミンのヤツが大人しく願いを叶えやがるかどうかってのも確かにある。だが仮に叶えられたとして、その後俺はどうする?
莫迦な質問だ。国に帰るに決まってるじゃねえか。
じゃあその後は?
__出口のない問いなんて大概ロクなもんじゃねえ。足下の石を力任せに蹴飛ばした。当たり所が悪かったか、石は明後日の方向に飛んでいった。祭壇で鳩が喉を鳴らしてやがる。弓でも構えて脅してやるかと握り直したらそれだけで慌てて逃げ出した。気配がわかるってのか。羽ばたく音がやかましい。アグロが呑気にそれを眺めている。祠の中はあいかわらず風の吹き抜ける音で満ちている。陽光の差す祭壇のあたりだけが現実離れして静かだ。石段に足をかけるとはがれ落ちた欠片の転がる音が響く。
そのなにもかもが俺をムカつかせる。
外に出ると相変わらずの抜けるような空だ。このあたりはコロコロ天気が変わるが、古の祠あたりはいつも晴れ渡っている。太陽が目を射る……いや、太陽じゃねえ。光の柱?見ればあちこちに空に向かって立つ光の柱が見えた。なんだありゃ?一体何本ありやがる……いや待て。まさかあれは__。
アグロを駆って最初の巨像がいたあたりに向かう。あれだけ苦労した崖も今じゃ楽勝だ。あのときと同じ、乾いた風が吹いている。初めて巨像に対面したときの小便をチビりそうな感覚が蘇ってきた。今なら秒殺してやるところだが、あいにく巨像の姿はない。影も形も。欠片一つ残っちゃいねえ。わからねえことは山のようにある。だが、今はそんなことを確認しに来たんじゃない。俺は空を見上げた。
さんざん苦労した挙げ句にようやく巨像が倒れたまさにその場所から、一直線に光の柱が立ち上がってやがる。ビンゴだ。
またわからないことが増えやがった。血しぶきがわりに影のように真っ黒なものを吹き上げた巨像が、なんでそのあとに眩しい光の柱を残す?そもそもこの光はなんだ?枯れ木にケリをくれてやると、ギシギシと臨終間際みてえな音を立てて幹を震わせる。俺は駆けだした。そのまま勢いを殺さずに、崖から飛び降りる。
足が痺れた。
俺にはこんなくだらねえことを考えてるヒマはない。アグロの腹を何度も蹴飛ばし、次の巨像に向けて走らせた。剣の光はまた間違いなく俺を巨像のもとへと連れて行くだろう。