日本語

ファストフードやコンビニにおいて、接客の際に「〜でよろしかったですか?」という言い方が広がっている、のだそうです。これは日本語の乱れじゃないか、という番組をNHK北海道でやってました。丁寧な言い方のようではあるけれども、なんで過去形なんだ?という違和感を感じるんだそうで。しかもこの表現が全国に広がりつつあるそうです。これは北海道が発信源なのではないか、という仮説を立てて掘り下げていくというのがこの番組の内容。

もともと地方においては「〜でよかったかい?」というように過去形でたずねる方言が少なからずあったようです。これが丁寧語的に変じて「よろしかったですか?」になったのではあるまいかという話。これの元は全国にチェーン店を展開する、北海道に本店を持つ「居酒屋」にあるのではないか、と番組では述べられていました。

ところが、聞きなれない耳には肯定が前提になっているように聞こえてしまう表現なんだとか。それに対して違和感や不自然さ、極端な話、押し付けがましさまで感じてしまうことがあるようです。それでも学生時代に居酒屋などでこの言葉に慣れてしまったいわゆる若者たちは、この表現を当たり前のものとして使うようになっていったのではないか。そういうことのようです。その背景には「〜でよろしいでしょうか」よりも「〜でよかったですか」の方が言いやすい、という理由もあるかもしれないとのこと。

ともあれ、地方の方言が全国区になってしまう例というのは、「うざったい(奥多摩地方)」のように、さほど珍しいことでもないようです。「よろしかったですか?」の場合には、もともとの方言に「共通語」的な丁寧語の衣がついているに過ぎない、といえるのかもしれません。チェーン店の接客マニュアルから、という経路には時代を反映しているなあ、と感じますけれども。

言葉はうつろいゆくもの、と言えばそのとおりなんですが、その過程であれやこれやと議論が巻き起こるのは結構なことじゃないでしょうか。NHK北海道もなかなか面白い番組を作ったなあ、と思います。「若者言葉」もずいぶん栄枯盛衰の激しい世界ではありますが、ここまでくると後戻りはしないのかも。
 でも、今のところ私は使ってないなあ。「若年寄」はやっぱり「違和感を感じる」派なのであります。日本語は英語などに比べて時制の概念に乏しいとはいうものの、やっぱり気になるものなんだなあ、と改めて感じました。

ちなみにまだ全国区のファストフード店のマニュアルには「よろしかったですか?」はないそうです。でも実際の店舗では結構使われ始めているとか。