世界の歴史16(河出書房):ヨーロッパの栄光

読了。いよいよ19世紀ってことで取り上げられる問題も現代により近いものになってきた。ヨーロッパ各国の革命運動とそれに対する反動とがせめぎあう時代。自由・民主主義vs封建主義ってところか。そして最後のところでビスマルクの鉄血政策が登場し、帝国主義時代の幕が開く。その後ドイツが一気に強国にのしあがり、圧倒的軍事力によって覇権を獲得する時代へと移っていく。この軍事力にカネの力を加えたのが現代のアメリカっすな。
帝国主義の勃興によってルネサンス啓蒙主義の時代以降続いた哲学と、その上に成り立っていた市民革命の時代が終わりを告げ、ダーウィンなどに代表される自然科学が学問の主役を占めるようになるってあたりが面白い。これはそのまんま現代に通じる道だし、哲学と現実との乖離というのは今だに言われつづけている話だ。さて、そうするとそのうち自然科学も夕暮れを迎えることになるんだろうか?現実との乖離という言葉は純粋理学や宇宙論に対して突きつけることができるかもしれないけど、それはちょっと底が浅すぎる。このあたりをもうちょっと考えてみるのは楽しそうだ。
とはいえ、この時代になると残された記録も多くて事実関係を追いかけるので精一杯になってしまう。もう一歩踏み込んできちんと自分なりの捉え方をしなきゃ意味ないよな。そろそろルネサンス時代に戻ってみよう。
ところで「世界の歴史」なる文庫は中公文庫のと河出書房のがあるんだが、記述の濃さでは中公文庫の「世界の歴史」方が上だと思う。ただし河出書房の「世界の歴史」は巻末の索引がすごく便利。もっとも中公文庫のはもう絶版になっちゃったのか、注文しても手に入らないんだけど。
ちなみにどっちも古い本だったりする。中公の方はもともと昭和36年に出版されたやつの文庫化だ。1961年。40年以上前ですか。河出書房のは文庫化が1989年ということしかわからないが、その時点で元の著者が亡くなっていたりするのでやっぱり古い本なのに違いないのである。これをちゃんと覚えておかないと古臭い歴史認識を振り回しかねないので注意が必要。