SONYの意図を深読みする

まあ深読みというのは大体において大外れするもんだからそのつもりで、「また適当なこと言ってら」と笑い飛ばしていただければありがたい。いきなり言い訳ですよ。
任天堂が圧倒的なシェアを持ってて、そこにSONYが乗り込んでくってのはいうまでもなくファミコン/スーパーファミコンと初代Play Stationとの構図とほとんど同じだ。歴史は繰り返すのか、同じ轍は踏まないのか、どっちに転ぶんだろう。
ただ今の任天堂って、ポケモンを筆頭としたキャラクターを用いたイメージ戦略を全面に押し出して、しかもそれをうまいことこなしてるように見える。これはファミコン時代にはなかったことだ。当時もマリオはいたし、看板キャラクターでもあったわけだけれども、キャラクターでゲームを売るってことを任天堂はほとんどしていなかった。ゲーム作りはゲームで勝負、という潔さだったのかもしれないけれども、逆にいうと任天堂PlayStationの前に敗れ去ったのは、そこにも原因があったともいえる。
そして現在。GBAにおけるポケモンの存在感というのは非常に大きい。とすると、焦点はPSPポケモンに匹敵するキャラクターを引き込めるかどうかにかかってくるのだろうか?
実はあんまりそうは思わない。
ポケモンで遊ぶユーザーというのは、おおよそ小学生がメインであると思われる。そしてさっきも書いたことだけれども、Play Stationのユーザーはもうすこし年齢の高い層が中心ではないだろうか。そしてPlay Stationで遊ぶ人が全員携帯ゲーム機を持っているわけではないだろう。PSPが狙っているのはそこの層のはずだ。つまり、Play Stationで遊んでいる層をそっくりそのままPSPにもスライドさせるつもりなのではないかというように思える。
しかしそれだけでは十分ではない。
namcoのサイトで見つけた資料(PDF)に、『年齢層別・プレイ時間別セグメント』というものがあった。これを見ると、ゲームをする世代というのは圧倒的に3〜12歳の低年齢層が多い。それだけでなく、年齢が上がるに従って平均のプレイ時間も減っているようだ。そんな人たちが携帯ゲーム端末なんか買うだろうか?
そういう人たちのためにゲーム機とは思えないほどのマルチメディア機能が盛り込まれているのである。
ゲーム機としてPlay Stationユーザーを引き込み、携帯マルチメディア端末として普段はゲームをしないユーザーを引き込む。それによってGBAが支配していた携帯ゲーム端末の勢力図を書き換える__PSPによってSONYが実現しようとしているのは、そういうことなのではないかと思える。
おそらく単純に携帯ゲーム端末をぶつけたのでは、ポケモンという怪物を擁するGBAの牙城を切り崩すのは難しいと踏んだのではないだろうか。ポケモンと相並ぶキャラクターを作れって言われても、それがそんな簡単な話じゃないってのは門外漢もいいところの私にだってわかる。
一方、SONYが推進するマルチメディア路線においても、携帯端末という選択肢は存在していたはずだ。小型カラー液晶の低価格化など、風は明らかに吹いているとさえいえる。とはいえ携帯マルチメディア端末は未知の分野である。少なくとも成功例は皆無としてもいいような状況だ。そこにいきなり踏み込むのはリスクが高すぎる。
このように双方が新機種投入にリスクを抱えていたなかで、その両者が出会ったのではないだろうか。そしてこう考える。
携帯ゲーム機と組み合わせて、ひとつの端末を作り上げるというのはどうか?
ゲーム市場においてはPlay Stationが築き上げた顧客層があるから、一定数のユーザーは確保できるだろう。これは未知の領域である携帯マルチメディア端末にとっては僥倖である。そしてマルチメディアに興味のあるユーザーをゲーム市場に引き込むことができれば、携帯ゲーム機というフィールドにおいてGBAという怪物を相手にする助けになる__一石二鳥。
そこまで考えると、デザインコンセプトに漂う高級感にも納得がいくんですな。もとより年齢層の高いところを狙ってるわけだし、マルチメディア端末があんまりチープなのもSONYのブランドイメージが許すまい。とすると、PSPはけっこうしっかりした作りで出てくるのかもしれないぞ。樹脂製の筐体しか知らないゲームユーザーはまたまたびっくりだ。
いやはや、コンセプトモデルを見ただけでよくここまで考えるな__と我ながら呆れるより他にはない話である。