ワンダの日記

ワンダと巨像」より。ネタバレを含む

9体目

今度は道に迷わなかった。巨像が古の祠からずいぶん近いところにいたからだ。いつもこうならとても助かる。どうせなら巨像はみんな俺のもとに馳せ参じるべきだと思った。
ともあれまた剣の光をトレースして進む。まったく不思議な剣もあったもので、レーダーの役割を果たしたと思ったら普通に斬っても使える。幾度となく巨像をぶっ刺し、間違えて堅い殻に叩きつけ、時として石柱を斬りつけてしまったこともあったのだが刃こぼれひとつしない。ここまで頑丈だとなにやら逆に不気味な気もしないではないが、便利なことはよいことなのであまり考えすぎないように心がける。多分俺が眠っている間に謎の小人たちが研いでいたりするんだろう。そうだそうに違いない。
光の指し示す先にはあからさまにアヤしい洞窟があった。あの中に入れ、ということか?しかし近づくにつれて全天にわかにかき曇り、なにやらおどろおどろしい雰囲気が漂いはじめた。俺の経験に照らし合わせてみるに、こういうときにいいことの起こった試しがない。
そういえばさっきからなにやら空に向かって間欠泉が吹き出しているじゃないか!むむむアレは怪しい。きっとあの隙間から羽虫上の巨像がわんさと飛び出てくるんだ。まったくもって油断ならん。どれひとつ調査してやろうじゃないか……と近づいた瞬間に間欠泉が吹き出して直撃をくらった。思い切りぶっ飛ばされてしばらく立ち上がれないほどのダメージ。法外な勢いもあったモノである。つーかやっぱりロクなことがないだろ言ったとおりだ。それもこれもみんなこの天気のせいなんだよ。
他にすることもなかったのでしかたなく洞窟に近づいてみる。ほらみろやっぱり巨像のお出ましだ!今度は一体どんなやつかと土煙の向こうに目をこらしてみると……亀?なんだよ亀かよ!まあせいぜいノロノロ蠢いて俺の一撃を食らうがいいや!
と思った瞬間に俺の方が一撃を食らった。
馬ごと吹っ飛ばされて地面に叩きつけられる。痛え!しかも土煙で周りが見えねえ!慌てて駆け出すとアグロがものすごい勢いで俺を追い越していく。この恩知らずが!しかしあの野郎亀のくせにやけに機敏に動きやがる。どうやらさっきやられたのは口から吐き出された弾丸のようだ。昨日のトカゲと同じようなやつか?ビリビリがないだけまだマシだが、それでも遠隔攻撃がズルいのには違いない。生きて国に帰れたら絶対に銃所持反対派になってやる。
そんなことを考えながらあたふたと逃げ回る。すると亀の野郎の動きが止まりましたよ?はて?見れば間欠泉の直撃を食らって浮き上がりかけてるじゃないか!これだ!ここぞとばかりに駆け寄って、緑色に光っている足の裏を弓で射てやる。一本攻撃しただけじゃまだ倒れやがらねえか!えいやと二本目を狙う。ちょっと遠いが命中!やった!俺天才!
すると亀がどうとハデにひっくり返った。ごろごろころがるもんだからやたら遠くまで行っちまいやんの。これだから図体のでかいヤツはキライだ。俺はまだ昨日の寝返りを忘れちゃいねえからな。
亀像には腹に毛が生えていたのでそこからわっしわっしと登り、ヤツが起きあがる前になんとか甲羅の上にたどりつくことができた。そうなっちまえばこっちのもんだ。一気に頭部までたどりつき、親の敵がごとくに刺しまくる。お前がどれだけ頭をブンブンしようが、俺はこの手を絶対離さねえ!
そしてトドメ。
まあ実際には何度も同じコトの繰り返しで、その都度間欠泉のところまで誘導するのにエラく手間取ったのだが、どうせ見てるヤツがいるわけじゃなし、俺もわざわざそんなことを言うほどの莫迦でもない。念のため、あとでアグロに口止めしておきゃいいだろう。