サポート期間のガイドライン

Windows Vistaのβ2が提供開始された裏側で、旧版Windowsのサポート終了の告知がなされています。タイトルにもあるXP SP1に関してはSP2への以降という対応が可能ですが、Windows98、Meに関しては7月11日の月例リリースをもってセキュリティアップデートも打ち切られるとのこと。
これに関しては「Windows 98/98 SE/Meのサポート、今夏で打ち切りへ(ITmedia)」という記事のなかで

インターネットセキュリティが提供されなくなれば、アップグレードを余儀なくされる人も出てくるだろうが、このシナリオで最も得をするソフトウェア企業がどこかは明白だ。

というややネガティブな書き方がなされています。また、孫引きではありますが「セキュリティホールmemo(6月10日)」では、NHKのニュースから

利用者の間からは、これまでに十分な周知がされてこなかったとして、戸惑いの声が上がっています。

というコメントが引かれています。この利用者というのが企業顧客と一般消費者のいずれを指すのかはよくわかりませんが、まあいずれにしても

日弁連消費者問題対策委員会の副委員長を務める紀藤正樹弁護士は「(中略) 製品の保証期間はメーカーが一方的に定めるのではなく、法律などでガイドラインを設けるべきだ」と話しています。

というコメントに頷かれる方は多いでしょう。私もなんらかの形でのガイドラインはあってしかるべきじゃないかと思います。
ただ、法律による保証期間の設定というのは前例があったかどうかってのがちょっとよくわかりません。
他の分野を見てみると、たとえば家電製品に関してはそれらしきものが存在することは確かです。これは(社)全国家庭電気製品公正取引協議会による「公正競争規約」に基づく業界内の自主的な取り決めってことになってますね。法律ではない。具体的にはその規約の中の「必要事項表示」という項目の中にカタログに表示すべき事項というものがあり、そこで「補修用性能部品の保有期間」を表示すべしと決められています。
ただ、実際にはDVDレコーダーのような最近になって出てきた製品などは含まれていなかったりして、結構荒っぽいなあという印象はぬぐえません。電気アンカは6年、とか書いてありますが、そもそも電気アンカってそんなに売れてるんでしょうか。謎だ。
この規約を見る限りでは、補修用性能部品の保有期間ってのはもっとも長くても電気冷蔵庫の9年ってことになってます。もっともこれは製造打ち切り後〜年、という形で決められているので、製品購入を基点として考えるともう少し長くなるのかもしれません。
でさて、これは果たしてソフトウェアのサポート期間の参考になるのかどうか。単純な比較はちょっと難しそうだという気がします。家電の場合はとりあえず補修部品を倉庫にでも用意しておいて、修理に関してはマニュアルを用意しおけば大丈夫なんじゃないかとも思いますが、今回話題になっているWindowsのようなソフトウェアの場合だと、部品の保有がないかわりにセキュリティアップデートを作成し続けないといけなくなる。その作成にかかる労力は、企業にとっては結構な負担になるんじゃないか。
とはいうものの、それだけを理由にサポート期間を定めるわけにもいきません。たとえどれだけ古いソフトウェアであろうとも、使っている人がものすごくたくさんいるのであれば、それはきちんと考慮されなければいけませんし、そうでなければおそらく大きな混乱が起こってしまうでしょう。
ただ、これを逆に言うと利用者が少なければその人達には涙を飲んでもらうしかない場合もある、ってことなんですよね。まさか最後の一人が利用を止めるまでサポートせよ、というわけにもいかないってことです。そうすると今度は企業に過度な負担がかかってしまうってことになる。
結局は両者の間のバランスを見極めないといけませんね、という至極当たり前の話なわけです。
消費者の立場からしてみれば長けりゃ長いほどいーんじゃないの、なんて考えてしまいがちですが、実のところもそうではないってことです。なんでかっつーとあまりにも過度な負担を求めてしまうと、そのために要する費用は製品価格として消費者にハネ返ってくるから。もう一度さっきの極端な例を持ち出しますが、たった一人の利用者に向けたサポート費用が新製品に転嫁されるとして、さて納得できるでしょうかってことです。
意外にできちゃったりするのかもしれませんけど。
にしたところで、今Windows98WindowsMeを利用している人って、どれくらいいるんでしょうね。テキトーに検索をかけてみたら「Operating System Market Share for May, 2006」なんてのが引っかかりまして、そこを見るとせいぜい数%程度ってことみたいです。もしこれが正確なんだとすれば、サポート打ち切りも仕方ないのかなあ、という気はしないでもないんですが……それでもWindowsそのもののシェアが母数になることを考えれば、国内だけでも数十万台はカタいんだろうし。
6〜8年というのが適切かどうかはともあれ、この手の話は印象論で語ってもあまりいいことはないんじゃないかなーという気がします。人によっては「今更そんな古いOS使ってる人なんているの?」ともなれば「OSなんてWin98で十分!」ともなるんでしょうから。中小企業向けの業務システムとして、いまだにMS-DOSが現役ってところもあるのかもしれません。
まあガイドラインの必要性については異論はないんですが、たとえ作ってみたところで、今度はそのガイドラインの周知を図らなきゃいけなかったりもするわけでして、いつまでたっても「周知が足りねー!」という人はいなくならないんじゃねーのって気はしますけどね。