備忘録/近況報告

気が付くともう9月になってまして、見上げれば鱗雲で夏ももう終わったなあという雰囲気が漂っております。結局8月は一本も記事を書かずに過ぎていってしまいました。つーか実際には7月3日からほったらかしのままになってるわけでして、二月も更新していないだなんて、流れの速いネットの世界ではもう死んだようなもんですね。うーん。まあそれはそれで仕方がないので、今後は場末サイトとしてつつましやかにやっていこうと思います。元からそうであったことはここだけの話にしておいてください。
えーと、更新してなかったのはあんまり書きたいことがないってのもあったんですが、あと、体調崩してたりもしました。実際入院とか退院とかしてましたし。
そもそもは8月のある週末に、なにやら目が痛いと思ったのが発端でした。最初はまあ単なる疲れ目だろうと思って大して気にもとめてなかったんですが、これが一日経っても二日経ってもよくなる気配がない。眼科に行って目薬ももらってもダメ。しまいには仕事にも行けないくらいになり、やがて額のあたりに発疹が出てきて皮膚科に回され、晴れて帯状疱疹という診断を頂いて入院、とあいなったわけです。
つーか一番ツラいのはこのへんの入院前の時期だったですよ。冗談抜きで一日中自室に籠もって悶絶しておりました。とにかく寝ようと思って目をつむるんですが、それでも目が痛い。そこは我慢しつつ無理やり眠りに落ちて、「すげー寝た!」と思って(寝ていても疲れる)目を覚まし、時計を見てみたら実は一時間しか経ってなかったりするのですよ。ぎゃふん。もう「いてー、誰かなんとかしてくれー」以外にはなにも考えられませんでした。これが単なる風邪なら二、三日寝てりゃ治るだろうという見込みも立つんですが、なにせその時は「細菌感染かなあ」くらいで原因もイマイチよくわからんし、よくなっているという実感もないしで、精神的にもかなりしんどかったです。
まあ帯状疱疹自体は通院で治療する場合も結構あるらしいんですが、いずれにしても結構痛いものではあるらしいです。で、今回は発症した場所が場所なんで入院して治療しましょうってことになったんですね。結局1週間ほど入院して点滴とかしてました。いや、実際治療が始まってからは痛みもずいぶん落ち着いて、正直かなりヒマだったんですけどね。目が痛いからTVやら本やらもあんまり見たいと思わないし。窓の外を見ながら「あー、今日もいい天気だなあ。きっと暑いんだろうなあ」とか思いつつ、ぼやっと過ごしてました。なんか正しい入院患者のあり方って感じがしますな。正しい入院患者ってのは実に退屈なもんです。
しかし1週間なんてまとまった期間入院するってのは、小学生の頃に肺炎にかかって以来です。その頃の記憶なんてもうはるか彼方に過ぎ去っちまいましたから、なんか色々新鮮といえば新鮮でした。上げ膳据え膳の生活ってラクでいいなあ!などとジジイみたいなことを考えたりもするわけです。まあご飯は基本的に粗食かつ薄味ですし、夜は9時消灯という超健康的な生活なので、なかなか馴染みにくいところはありましたが。
あと、他の入院患者さんも色んな方がいましたですよ。向かいのベッドにいたイギリス人の患者さんは、明け方頃に突然日本語で結婚式のスピーチを始めました。どうやら寝言だったらしいんですが、寝言で日本語が出てくるようになれば立派なもんだと思います。ただ、その方あんまり日本語は得意じゃないみたいで、日常会話も全部英語で押し通してたんですけどねー。その昔、無理やりスピーチを押しつけられて煩悶したイヤーな記憶だったりするんでしょうか?
他にもお見舞いに来たお父さんをウザがっていたら、その内マジギレされて「そんなことが許されると思ってるのか!」「もうお前の面倒は見ないぞ!」とか罵られている大学生とか、一日中「おーい!」と叫び続けている人とか、夜中に「人殺しー!」と叫んでる人とかがいたりしました。人殺しなんて単語は、よく考えてみるとナマのセリフとして聞く機会は滅多にありませんね。つーか扶養の危機に瀕した大学生はよいとして、後のお二人はどうなんでしょう。なんか入る病棟を間違えましたか?いやはやまったく、世の中本当に色んな人がいるもんだ。まあ病気によっては一日中寝たっきりってこともあるでしょうし、それは精神衛生上あまりよろしくないだろうってことだと思いますけどね。
ただまあ、そういうエキセントリックなところのないごく普通の患者さんって方が実際には当たり前なわけでして、そういう人たちの会話を聞いているとなんだか時間の流れが違うなあ、と感じました。なんつーか、えらいのんびりしてるんですよねえ。まあ入院している人なんてある意味人生黄昏時な人ばかりですから、それも理由のひとつではあるのかもしれません。でもさー、聞こえが悪くなっているせいか、時折全然話が噛み合わなくなることがあるんですよ。結局自分の言いたいことを順番に言い合っているだけになってたりするわけです。もう会話にすらなってません。
しかしそれでいて「人の話を聞けー!」となるわけでもなく、ご当人らはいたって満足そうなんですよねー。あれは一体なんなんでしょうか。独り言ではあそこまでの満足は得られないだろうしなあ。理解されているかどうかはともかく、とにかく聞いてくれている(らしい)人がいるだけでいいってことなんでしょうか。いやー、なんかすごいよなあ。こういうのを見てしまうと、「相互理解!相互理解!」とか言って鼻息を荒げつつ肩を怒らせるのがとてつもなくアホなことのように思えてきます。ある種の悟りとでもいうのか、これに比べたらBlogやらSNSやらのネット上でのコミュニケーションなんてすげー青臭いよなあ。
まあそうはいったところで、そちら側の世界に浸ってしまうには私もまだまだ修行が足らんというのも実感したですけどね。やっぱり自分の話はちゃんと聞いてほしいし、相手の話もちゃんと理解したい。そういう意味においては、私もまだまだ「青臭い」双方向コミュニケーションとやらに未練がありますよ。
ま、そんなこんなで無事退院しまして、今はこうやってダラ文を書くところまでには回復しました。もっとも今でも目の痛みは残っていて、痛み止めとか飲んでるんですけどねー。最初に「目が痛い」と思ってからそろそろ1か月になるんですが、随分引っ張るもんだ。帯状疱疹って完治までにはけっこう時間がかかるものみたいですが、うーん、早く完治したと言えるようになりたい。つーか目が痛いってのは結構不便なもので、早く治れよイライラするなもうとか思います。
ただ、今回の件で一番ショックだったのは、生まれて初めて自ら座薬*1を挿入したことでもなく、入院費で10万弱が飛んでいったことでもなく*2、担当医の方になにが原因でこんなことになっちまったんでしょうかと尋ねたときに「衰弱とか」などと言われたことです。いやいや普通に「体力が落ちているときに……」とか言ってくれりゃいいじゃないですか。よりにもよって「衰弱」だなんて、そんな。
というわけでこの場末のサイトは、世間の皆さんが夏休みを謳歌している時期を病院のベッドの上で過ごした衰弱者によってお送りしております。皆さんも衰弱の果てに待ち受ける顔面の帯状疱疹にはくれぐれもお気をつけ下さいませ。えーと「皆さん」って誰に向かって言ってるんだ?まあいいや。それでは。

*1:入院初日に痛くて眠れず、ナースコールをして処方してもらった痛み止め

*2:簡易保険に入ってたし、高額医療費の還付制度もあるので