センター試験で大騒ぎ

話題になるだろうと思ったら案の定で、やっぱり規模の大きいイベントは大変だと思います。受験者数は約50万人で、うち英語でリスニング機械の不具合により再テストの対象になったのが394人(実際に受験したのが381人)。初期不良率はだいたい0.08%。
でもって、上で紹介した記事に関して言えば、asahi.comの『受験生「まさか今年も」 センター試験リスニング不調』が群を抜いて面白かったです。特に最初の段落。

心配されていた事態がまた起こった。「聞こえにくい」との訴えが各地で相次いだ、大学入試センター試験の英語のリスニングテスト。センターは昨年のトラブルを受けて機器や試験方法を改め、できる限りの準備をしたという。それなのになぜ、騒動は繰り返されたのか。受験生の間では戸惑いが広がり、トラブルに巻き込まれた生徒は疲れ切った表情だった。

非常に恣意的じゃないですか。asahi.comには2本の記事が載っているわけですが、↑の記事に関して言えば受験者数も再テストの対象になった人数も書いていないという。うーむ。
いや、この記事を読んでまず最初に心底くだらねえとか思ってしまったんですよ。でもちょっと考えてみると、こういう視点があること自体には何の問題もないはずなんです。そりゃハズレを引いちまった受験生にとってはたまらんでしょうからね。じゃあ、だとするとこの腹立ちは一体なんなのか。
といったらやっぱりバランスの悪さというところに尽きるんだろうと思うのです。なんでかといえば、こういう受験生側の視点に立って大学入試センターの責任を問いただすような記事がある一方で、1%にも満たない不良率について言及している記事は存在していないんだもの。つーかさ、asahi.comのもう一方の記事には

 センターによると、リスニングテストは志願者の89.9%にあたる49万7508人が受験し、再開テストはそのうち0.077%が受けた。センターは、昨年の混乱を受けて機器や試験方法を改良したが、再びトラブルが起きたことで、試験のあり方が改めて問われそうだ。

って書いてあるですよ。0.077%とまで書いてあるんですよ!それでいて「試験のあり方が改めて問われそうだ。」って言っちゃうのか。もうワケわかりません。
これじゃあこのICレコーダーを作った人が浮かばれないよなあ。
どんな機械を作るにしたところで不良品の存在を0にすることは不可能です。50万個も作って、その上全国に配送ですよ。できるわけないじゃないですか。むしろ0.077%は驚異の低不良率として賞賛されたっていいくらいなのに、どうしてそれを言わんのだ!日本は「ものづくり」の国なんでしょう。だったらものづくりに対する正当な評価だってできるようにならなきゃウソってもんじゃないのか。
まあこの手の公共性の高いものは完璧で当たり前って考え方が優勢な側面が少なからずあります。先にも書いたとおり、実際に再試験を受ける羽目になった受験生にとっては冗談じゃない話なんで、確率が低ければ不具合があってもいいのかいやダメだ、って論調はそれはそれでアリだろうとは私も思う。というか感情論としては間違いなくそっちに傾くでしょうし、だからこそ大学入試センターのエラい人は「回収して原因を特定していく。今後さらに改善をはかって、限りなくゼロに近づけていきたい」って言ってるんでしょう。
でもそれと同時に、0%の不良率を達成するために必要なコストは無限大であって、そこを闇雲に追求するよりはある程度の不良は想定した上で発生時の対応について考えようという考え方も存在するんだと一言くらいは言ってもらえないかなあ。だって理屈としてはそっちの方が当たり前なんだもの。
受験生かわいそう!って感情論と、そうは言いつつある程度は仕方ないよねという理屈とは対立しますが、だからといってどちらか一方だけフォローしておけば衝突もおこらず平和で結構、なんてのはかなり気持ちの悪い考え方だと思うのです。バランス悪いってのはそういうことなんですよ。決して「避けがたいリスクなんだから再テストを受ける羽目になった受験生は運が悪かったと思って諦めろ」って言いたいワケじゃない。両方の考え方がある中で、どういう妥協点が存在しうるかを考えるべきなんじゃないですかってことなんですよ。
つーかそういうものの見方ってのを期待したいんだけど、それは無理なんですかね。そんなどっちつかずの態度はつまらないってことなんでしょうか。感情だけで生きてる人と、なにもかも理屈で一刀両断な人の罵りあいの方が面白いの?まさかね。
いずれにしても受験生の皆さんと試験監督の皆さんはお疲れさまでした。ときに一発勝負の受験っていつまで続きますかね。