メタボリック症候群フォローアップ

メタボリック症候群略してメタボという言葉もすっかり定着してしまった感があります。そういや出始めの頃になんか書いた記憶があるなあと思って探してみたら、2006年5月9日に「病人を作るには「病気」の定義を変えてやるのが一番早い」なんて書いてました。
ほれ見たことか。
……というのはちょっとズレてるんですけど、『単なる「状態」にある人のことを「有病者」とか呼んじまってることになるわけなんですが、いいのかこれ?』とか書いてあるからまあいいや。ちなみに当時の私は「メタ症」という略語をつけてましたが、これは大ハズレだったようです。馬鹿め。
つーか去年の私は『そんなに病人を増やしてどうしたいんだ』ってことで、病院は検査需要が増えるだろうから儲かっていいよねえ、というようなことを書いてました。けれどもこれもちょっと甘かった。
昨今、ダイエット関連等の健康ビジネスでどれだけメタボメタボと叫ばれていることか。右を向いても左を向いてもメタボな日々で、この言葉を聞かない日はないんじゃないかというくらいになっちまってますね。それがどれだけの市場的価値を生んでいるのか、詳しくは知りません。けれどもメタボ特需とでも呼ぶべき状況になっていたところで驚くには当たらないような気がします。だからこそたったの1年でメタボという言葉がここまで浸透してしまったのでしょう。
で、今回の調査結果です。書いている時点で自治医科大学のサイトには情報が上がってなかったので、記事中の記載から判断するわけですが、『メタボリックシンドロームの人の死亡率は、そうでない人の1・09倍で、統計的に意味のある差はなかった』ということなんだそうで。つまりは誤差の範囲だったってことですね。
もっとも『虚血性心疾患や脳卒中など血管病による死亡率は、メタボリックシンドロームの方が約2倍高かった』と書いてあったりもして、このへんちょっと読み方が難しいような気がします。死亡率は変わらないけれども、死因に関しては偏りが見られた、ということなんでしょうか。よくわかりませんな。
ただ、結局のところは『メタボリックと診断されても恐れず、生活習慣の改善に努めればよいのでは』ということなんで、まあ結論としては当たり前の話ではあるわけです。飲酒・喫煙は控え、肥満にも注意しましょう。運動不足にも気を付けて、とかいうそんな感じの話。
でもさ、そんなの今までと全然変わんないじゃないの。
やはり名付けの勝利であることだなあ、という気はするんですな。でもって今後メタボという言葉がメディアから消えることはおそらくないのだろうとも思います。なにせ元ネタは厚生労働省の2004年国民健康・栄養調査というお役所の文書であって、いわばお墨付きの出たありがたいお言葉なわけです。そんなにおいしいキャッチコピーを、みすみす手放す人がそういるとは思えない。その正直さには敬意が払われるかもしれませんが、ビジネスパーソンとしてはダメの烙印を押されるでしょう。
まあそこに乗っかって踊るも踊らないも個人の好きずきというやつです。いつもなにかを心配していなければ落ち着かない人も結構たくさんいるようですから、それをどうこういう気にもなりません。大体メタボなる言葉が便利であることにも変わりはなく、あんたは肥満・高血糖・高中性脂肪血症・高コレステロール血症・高血圧だから、このままだと病気になっちゃうよ、と言うよりかはメタボの一言で済ませてしまった方がラクなことにも違いないので、まあよいのではないでしょうか。
でもそれでお高い健康食品を買う必要があるのかどうかは、もうちょっと考えたほうがいいんじゃないのって感じですね。メタボという言葉がなかったころに、健康診断で注意されたからって急にそういうことをしたのかどうか。まあしたはいいけど三日坊主ってのがおおよそなところじゃないかという気がするわけで、それがメタボという看板にすげ替えられところで鋼鉄の意志を持つことができるのかしらん。
どうやら私はそのへんの健康志向だとか、健康ビジネスとかにつきまとう胡散臭さが嫌いらしいです。読み返してみるとなんか機嫌の悪そうな文章になってるしなあ。生きるためには健康である方がよいけれども、健康であるために生きるつもりはないということなんでしょうね。
いやーカッコイイ台詞であることだ。手垢でベトベトな感じはするけれども。