平等な社会を求めて

平等ってのは素晴らしいものでして、大体なにが素晴らしいのかって日本国憲法にしてすでに

すべての国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない (第14条1項)

と書かれているから素晴らしいわけです。憲法ですよ憲法。すべての法律の根幹をなす、まさに法律中の法律である「憲法」において規定されているんですから、平等の概念は尊く、かつ絶対不可侵であり、不平等主義者は根絶せらるべきと申せましょう。かかる存在は単に害悪であるのみならず、善良なる人々の心根を汚らしめることすらありうることを考えれば当然であります。
つまり不平等主義者には存在意義なし。死ね。



とう言説があるかどうかは知りませんが、世の中には徒競走で手を繋いでゴールしたり、白雪姫が25人の劇が上演されたりすることもあるそうで。徒競走はまだ簡単に実現できそうですが、25人の白雪姫ってのは脚本担当者が頭を抱えそうな題材ですね。同一人物が25人。なんともシュールであります。
そうですねえ、それぞれ性格の違う白雪姫達が時には対立し、時には協力しながらも暗い森を抜け出すってのはどうですか。で、森を抜けたら目を覚ますという夢オチ。実は夢の世界というのは多重人格障害を抱えた白雪姫の内面世界でのお話だったということにしましょう。森からの脱出というのは治癒のメタファーですね。白雪姫がそのような病を抱えたのは幼い頃に母親から受けた虐待がもとで、その母親ってのが王妃。
王妃は自らのふるまいが白雪姫を病のフチに陥れたことを知ってか知らずか、手のかかる娘を嫌って捨てたわけですな。どうせ社会に馴染めずにのたれ死ぬだろうと思えばさにあらず、白雪姫は25の人格を抱えながらもしぶとく社会の荒波を泳いでいきます。で、そんな白雪姫の見た目だか内面だかにホレて求愛しちゃった王子様。
けれども親に捨てられ、幼い頃から辛酸をなめ続けた白雪姫です。ワタシがそんな普通の幸せを掴んでもいいの?と思い悩む。で、悩んだ挙げ句に昏々と眠り続けることになっちまいます。なんの現実逃避かと思えば、ここでくり広げられるのがさっき出てきた内面での物語なんですな。で、逡巡を乗り越え、めでたく目覚めた白雪姫!もちろん王子の求愛は受けると決定!
そうなると世界中からマスコミがすわっと駆けつけます。おめでとうおめでとう!おめでとうロイヤルウエディング!今の心境は?ハネムーンはどちらへ?どんな家庭を築きたいですか?お子さんのご予定は!
これだけ白雪姫に注目が集まると、その出生をほじくり返す輩だって出てくるものと思われます。とすると王妃の虐待がバレちゃう!王妃のDVとはなんとスキャンダラスな。もちろん評判はガタ落ちですよ!王妃破滅!__そうはさせじと白雪姫もろとも二人を亡き者にしようと王妃から差し向けられる刺客達!パパラッチを使ってトンネルでの事故死が目標です!手に手を取っての逃避行を行く王子&白雪姫ご一行。果たして無事に結婚式場までたどり着けるのか!?
えーと、これだと目覚めたあとのストーリーが長くなっちまいますな。25人の出番が少なくなっちゃう。ここはアレだ。苦難を乗り越えた証として、白雪姫は25の人格を自在に操るスーパーヒロインになったことにしましょう。それで万事解決いうことなしです。多重人格戦隊スノー・ホワイツ!人格が変わると見た目(=役者)も変わるゾ!前半の「森からの脱出編」と、後半の「バトル逃避行編」とで、映画2本文くらいの脚本はでっちあげられるハズ。
これで25人の白雪姫という設定も現実的になりましたね!やった!

えーさて、なんだかんだといいつつも、実際の社会ってのはやっぱり不平等にできてまず。デキるヤツもいりゃそうでないヤツだっている。その中をどうやって泳いでいくかが問題になるんですな。
いいだけオトナな年になって、はじめてこの事実に直面するってのは相当に大変だろうと思います。学校じゃすべてが平等だったのに!平等であるべきとクチを酸っぱくして言うってことは、裏を返せば現実はそうじゃないってことなんですけど、それに気づかなかったお前が悪いといわれてそう簡単に納得できるもんじゃありません。
まあそんなわけで乗りかかった船というか、やっちまったことには最後まで責任を持ちましょうというか、実際の社会も平等なものとして用意してあげなきゃいけませんね、という話になります。ゆりかごから墓場まで、平等な社会の実現です。社長からヒラ社員まで給料は全員同額、どういうカラクリか営業成績だって皆同じということになっている。もちろん自分の所属する会社だけでなく、隣の会社もそのまた隣も同様。同業他社をみてみても、売上額から利益の多寡までみーんな同じ。どころか他業種の会社だってBS/PLが判をついたように同じだったりするわけです。すごい。
もちろん普通にやってりゃそんなにウマいこといくわけはないので、その辺は国家権力がよろしくやってくれるんですな。出し抜きを図る不逞の輩に対しては官憲の目がそこかしこで光ってますよ。そりゃ、多少の権力の偏りは必要になるかもしれませんが、それとて平等な社会の実現には必要不可欠なんだからしょうがない。いいのかいそんなクチをきいて。オタクの会社が供出すべき利益を隠蔽してるって言ってやってもいいんだぜ?いやまったく平等ってのは素晴らしいですね。
共産主義?なにそれ食えるの?

結局のところ、平等ってのもラクじゃないよなと思った。