EXLIM ZOOM のコンセプト

CASIOの開発者に新型EXLIM、『EX-Z3』の技術的な特徴、開発コンセプトなどをインタビューする記事。こういうのはZDNNらしい記事といえるんじゃないかと思います。他誌でも同様の記事はありますが、たいていはその製品が『売れた』後の取材になりがちだったりしますからね。

というわけで記事の内容なんですが、前編が技術的な話、後編が製品コンセプトについての話になっています。以前「この製品のコンセプトがよくわからなくなってきた」なんて書いてしまった手前、どうしても後編の方が気になってしまうんですが、前編の技術的な話もなかなかどうして面白いです。特に沈胴式のズームレンズが上下2段になって格納されるというあたりは「そんなことまで!」という驚きを禁じえませんでした。もっともレンズはPENTAXの開発ですから、CASIOさんの本分は「Stack MCM(Multi-Chip Module)」と呼ばれる高密度実装技術にあるのかもしれませんが。いずれにせよ、薄型化に関する強い意気込みにはおそれいるばかりです。

それに続く後編では、EX-Z3の製品コンセプトが語られています。曰く『新製品はEXILIMの後継モデルではなく、“EXILIM ZOOM”という新ブランド』、『薄型のみを追い求めたものではない』。そしてEX-Z3で盛り込まれた新たな新機能の数々を通して最終的に新型EXLIMが目指したのは、『毎日使いたくなるようなデジカメ』なのだそうです。えー、“EXLIM”と“ELXLIM ZOMM”は別ブランドですか。それじゃあ両者の間に同じ『薄さ』を求めるのは間違いだったんですね。うーん、なんかごめんなさいという感じです。

で、“EXLIM ZOOM”に対する開発者の考え方を見てみると、なるほど画像の反転表示機能やカレンダー表示機能などの新機能の一つ一つに説得力が出てくるように思われます。大きくて綺麗な液晶を搭載することで、EX-Z3は単体で撮影と閲覧というサイクルを完結させようとしたと捉えることができる。従来のデジカメが、写真をPCに取込んだあとでモニタ上で閲覧するというスタイルを基本にしていたのとは違いますね。むしろ『毎日使う』という感覚とあわせると、カメラ付携帯電話の方向性に近い。

しかしそうするとなおのこと「本当に300万画素もいるかー?」という疑問が浮き彫りになってくるんですね。どれだけ高性能といったところで、EX-Z3が搭載した2.0型TFTでその画素数を生かしきることはできないでしょう。ひょっとすると100万画素クラスだって十分すぎるくらいかもしれない。それに加えて予想価格の5万円前後というのは日常品のレベルを超えてます。携帯電話の3万円だって個人的には高すぎるというのに。私の場合、5万もするものを使うのにはどうしても神経を使ってしまうのですよ。より安価にしたほうが『毎日使いたくなる』というコンセプトには一致するんじゃないか。そのために画素数を抑えても、2.0型TFTの性能をフルに使いきることができるのであればそうするべきだったのでは、と思います。

あと、前にEX-Z3について書いたときには「ズームなんていらねー」とか言ってた記憶があるんですが、これについては今でもあまり変わらなかったりします。なんでかっていうとズーミングする手間がちょっとヤだなという気がするんですね。フレーミング→ズーム→フレーミングの微調整なんて多分日常のスナップだとやらないだろうなあ、と。極端な話、光学ファインダさえ「覗くのが面倒だからいらん」とか言い出しかねない勢いです。なんかそれはそれでデジカメが既存のカメラとまったく違うモノになって面白いような気はしますけど。

とまあ、結局前と同じようないちゃもんのつけ方になっちまったんですが、先に触れたように、EXILIM ZOOMが『毎日使いたくなるようなデジカメ』というコンセプトに合致した機能を提供してくれていることは間違いないです。こういうきちんとした主張のある製品はぜひ使ってみたい。その主張を伝えてくれたという意味で、この記事は非常に読みでがあったというわけです。でも5万じゃやっぱりおいそれとは買えないですよ。やっぱり既存の100万〜200万画素のEXLIMをこういう方向性で作り直してほしかったなあ。


しかしあらためて考えてみると、私のつけたいちゃもんってのはどれも「機能を削ってもっと安くしろ て言ってるんですな。それってつまり「もっと安くしないと俺が買えねーじゃねーか」ってことなんじゃなかろうか。CCDを違うモノに変えたところでサイズはそんなに変わらないだろうし、光学ズームは最近のデジカメだとほとんどの機種に搭載されているから、EXLIMも同じような道に進むのも当然っちゃあ当然です。むしろコンセプトを同じうするカメラ付携帯電話との差別化という意味のほうが大きいかも。

とするとナニか。今まで私が書いてきたEXLIMへのいちゃもんってのは全部貧乏人のヒガみですか!うわー、なんかものすごく恥ずかしい気分になってきました。とりあえずこのへんで書くのはやめといたほうがよさそうだ。EX-Z3は店頭でぜひ触ってみたいと思います。でもきっと買いません(涙)。