CDの行く先

「CDの父、20年を語る」に続く、「CDの父」中島平太郎氏へのインタビュー記事。なかなかに闊達な意見が読めて面白いです。内容は最近CDの音質が低下してきたことへの警鐘と、音楽業界への要望。そして著作権保護にむけた方策とCDの今後についてです。

その中で私が特に注目したのは、やはり最近話題のコピーコントロールCD(CCCD)についての部分。AvexSCE(レーベルゲートCD)など、実際に発売されているものにはごく一部であれ再生できないプレイヤーが存在していますが、ここを問題視されているようです。「CDプレーヤーは累計12億台。CD-ROMドライブは14億台、現在存在しています。それで再生できないようなものを出したら、僕はだめだと思うんです」と実に明快に斬っている。しかしながらコピーし放題がよいというのではなく、「早くきちんとしたものを作ってほしいんだ」ともおっしゃる。現行CDの規格作りに深く携わったソニーとフィリップスへの期待が大きいこともわかります。


WebにおいてもCCCDへの反対意見というのはよく見かけますが、そこでちょっと気になるのは「とにかくCCCDには反対」で終わってしまっている論調が多いことです。確かにそれはわかる。音質の問題についてはまだCCCDを聞いたことがないのとそれほど大した耳を持っていないのでなんともいえないのですが、わずかであれ再生できない可能性があるってのは大問題じゃないか。それに加えてたとえ再生できなくとも返品を受け付けないと来た日には、そんなものを買う気にはとてもなれないってもんです。

でもだからといって著作権が踏みにじられまくっている現状でいいのか、というとそれもまた違うだろうという気がするんですね。私がWebでの数多くの意見を呼んで不満に感じることというのはそこにあって、技術なり法律の観点からCCCDの問題を追及はしても、それに変わる新たな対策についての議論が深められているようには見えないんですよ。とにかくCCCDがイヤなのはわかった。不買運動も結構です。じゃあちゃんとソフトを買って、なおかつカーオーディオ用途とかのためにコピーもしたいという場合にはどんな技術が必要なんだろう。どういう体制を音楽業界に望みたいんだろう。

おそらく音楽業界でもこの疑問に対する明快な解答を持っていないのではないかと思います。だからこそ一部のメーカーが先行的にCCCDをリリースするという状態になっているんでしょうね。しかし再生できないプレーヤーがある時点でこれは下策だったといわざるをえないように見えます。拙速だったと言ってもいい。

ただ、1回目のコピーは無料だけど、その後は登録と料金支払いが必要っていうレーベルゲートCDの方式ってのはそんなに悪くないんじゃないかと思います。無料が1回だけってのはちょっとケチくさくないかって気もしますけど、このへんをもうちょっと煮詰めていくと落としどころが見つかるんじゃないだろうか。コピーがまったく不可能ってのも困るし、無限にコピーし放題ってのにも問題があるとなれば、まずその中間点を探るしか方法がないですよね。そのへんの努力が尽くされたのかというとこれが非常に疑わしいわけですから、まずはそこから話を始めるのが正攻法なのかなと。

まあ、散々文句ばっかり言ってるんですが、だからといっても現場の技術者さんたちが馬鹿ばっかりってことももちろんないわけです。現行のCDをさらに拡張した規格はDDCDやSACDなど、すでにいくつか存在している。このあたりは「「CDS? あれはプロテクトじゃないです」――再び,コピーコントロールCDを考える(1)」あたりが面白いんじゃないでしょうか。規格はもうあるんだから、単純に考えればあとはこいつを普及させるだけじゃないかと思うんですけどね。中島氏もそのあたりを踏まえてソニー&フィリップスのリーダーシップを求めてるんじゃないかというように思えるんですが。

ただしDDCDもSACDも現行CDプレーヤーじゃ再生できないですから、ここにちょっと問題がある。プレーヤーも高い。それに新しい規格の普及となると、どうしても音楽業界なり家電メーカー各社なりの利権争いなんかがからんできちまうんでしょうかね。となるとどうにも首のつっこみにくい話なんですが、それに巻き込まれる消費者こそいい面の皮なんで、ここはメーカーさんや音楽業界のみならず、実際に音楽を作っているアーティストのかたがたにもがんばっていただきたいところです。

しかしいろいろ考えてみると、なんか今の状況ってのが次世代規格制定のもたつきから生じるエアポケットなのかしらんという気がしてきましたよ。どこのメーカーでもよいからリーダーシップを発揮しようとしてくれないものか。とりあえず現行音楽CDにかかわる特許が昨年と今年でずいぶん期限切れになるそうなんで、そのあたりが時期としてはいいんじゃないかって話は前々からあるみたいなんですけど。


でも中島氏がすごく「音質」を重視するような人みたいで、そのあたりの話は読んでいて面白かったですよ。やはり確固たる目標のある人ってのは違いますな。CD-Rの話とか読んでるとずいぶんリベラルな人だなあと思いますしね。好感度高し。

しかしCDの音質が下がってきてるっていいますけど、少なくともレコードやテープのような経年劣化ってほとんど感じられないですよね。とすると音質重視のアプローチってのは今後どんどん大変になってくんじゃないかという気がします。やっぱりみんな大変だ。はふう。

とりあえず私の希望ってのはちゃんと説得力をもったプロテクトをもった次世代プレーヤーを5〜6万円で購入できるあたりまでもってきてくださいなってとこかな。


ところでonlinesofts.comさんの2月1日付Diaryで、CD Manipulatorを使ってCCCDのバックアップを取る方法が紹介されてたんですけど、今見てみると該当日の記事が見当たりません。あれー。

……と思ったらM'sさんから掲示板に書き込みをいただいてしまいました。ソフト紹介の2月1日だったんですね(汗)。ありがとうございました。