「大衆の反逆」

というわけで、ようやく読み終えた。長かったが、なかなか充実した読書体験だったと思う。今まで読まずにいたことを後悔してしまう読書というのも久々だ。しかしながら1930年に書かれた本書が現代の日本にひどくマッチしているというのは、興味深くもあるが、同時に空恐ろしいことでもある。もちろん広いヨーロッパと日本を同列に語ることは強引すぎるが、それを差し引いても「大衆の反逆」は現代日本の病巣にあると強く思わされる。現代日本には思想/哲学がない__とはよく言われることだが、これは先達に対して100年近く遅れているのだ。技術においては世界のトップレベルに達したとはいえ、その歪さこそが問題なのであろう。
ともあれ、本書は一読だけで済まされるほどに簡単な本でもあるまい。何度も読み返して「座右の書」としてもよいくらいの本だろうと思う。