夏のロケット』

夏への扉』と一緒に買った小説。サントリーミステリー大賞の受賞作なんだそうだが、それは知らなかった。というかこれはミステリーじゃないだろう。にも関わらずミステリー大賞を取ってしまうあたりが、すでにしてこの作品がどれほどのものかを語っている。どうりで平積みにしてあるはずだ。
最初にこの作品のことを知ったのはあさりよしとおの漫画『なつのロケット』を読んだときだ。ほぼ同名の『なつのロケット』は、実際『夏のロケット』を参考にして描かれている。順番が逆だ。まあそれでもいいんだけれども。
端的に言えばこの本は買いである。細部における人間の描写にやや厚みが足りないという気はするが、それを差し引いても文句なしに面白い。技術的な話もたっぷり楽しめるし、いざ打ち上げの段階になってつのる焦燥感には、つい引き込まれてしまう。読み終えたあとのカタルシスは、どれほど自分がこの作品にのめりこんでいたかを気づかせてくれた。
技術用語のとっつきにくさは確かにあるから、すべての人にこの本を買えとはいえないのかもしれない。けれども、少しでもロケットに興味があったり、そこにロマンの香りを感じるのであれば読んでみてほしい。
ところで__ロケットには夏がよく似合う、と思うのだが、どうだろうか。