サンクトペテルブルグ・フィル 「展覧会の絵」

サンクトペテルブルグ(旧レニングラード)の300周年を記念してなにゆえ日本公演をするのかはよくわからないが、ともあれそういうコンサートなんだそうだ。10月3日の京都を皮切りに、19日まで日本全国を行脚する。札幌は2番目。ちなみに公演のある都市は京都、札幌、東京、名古屋、金沢、大阪、相模原となっている。ソリストの入れ替わりなどもあって、プログラムは全部で9種類もあったり。練習が大変そうである。
今回のプログラムはリムスキー=コルサコフラフマニノフムソルグスキーとロシア音楽三昧。ロシア音楽というのは不思議なもので、ちょっと聴いただけで「あ、これはロシア音楽だな」とわかってしまったりする。もちろんフランス音楽やドイツ音楽にだってそれぞれなりの特徴はあるわけだが、ロシア音楽ほどきっぱりはっきりとはしていない。ちなみに調べてみたわけではないのだが、ロシア音楽にささげられる形容詞は「憂いを帯びた」、「憂愁の」というのがやたらに多い気がする。そうして実際そう聴こえてしまったりもする。でもそんな暗い色調ばかりの音楽ではないと思うんですがね。憂いを帯びた曲調から一転してなだれこむカタルシスのスケールのデカさもまた、ロシア音楽の特徴だと思うのである。世の中は広くクラシックにさまざまな楽器が取り入れられてきたとはいえ、大砲をブっ放す大音声を音楽に組み込んでしまうのをスケールがデカくないとしてなんという。
さて曲目であるが、最初のリムスキー=コルサコフは初聴の曲であった。そしてなんというかあまり印象が残っていなかったりもする。一番覚えているのは曲が終わったのにも気づかなかったことだというから情けない。
続いてラフマニノフ。ピアノはエリソ・ヴィルサラーゼである。プログラムの紹介記事を読んでみると、『シューマンの最も優れた解釈を行う現代の演奏家のひとり』なんだとか。ふーむ。いや、シューマンってほとんど聴いたことがないんですが。さらに読んでみると、どうやら音楽教師としてもかなりのヒトであるらしい。モスクワ音楽院ミュンヘン音楽大学の常任教授であり、主要な国際音楽コンクールには審査員として引っ張りだこだそうだ。写真を見る限りではちょっとキツめの先生って感じだが、本日は3階席なので表情をうかがうことはできず。
そうはいうものの、さすがにピアノのテクニックはすごい。というかすごすぎてなんだかよくわからない。はなはだアテにならない感想ではあるが、やや硬質な音を出していたような気がする。キチっとした音楽って感じ。
で、「展覧会の絵」である。ムソルグスキーはこの曲をピアノ曲として作ったのだが、その後ラヴェルがオーケストラ用に編曲し、そっちの方が有名になってしまった。最近ポップスでおおはやりのリバイバルってやつだろうか。ちなみにピアノ曲の方も聴いたことがあるが、オーケストラのほうにすっかり馴染んでしまっているせいか妙な違和感を覚えてしまう。本当はそうじゃないんだが、なんだか作曲途中のスケッチを見ているような感じがするんですな。
実際の演奏はというと、これがなかなか面白い……というとアレだが、色んな楽器を使ってるんだ
なぁ、とヘンなところに感心してしまった。悪いクセである。でもこれほど有名な曲もそうはないだろうなあ、と思う。誰しも一度はあの「プロムナード」の主題は聴いたことがあるんじゃないだろうか。それだけにオーケストラのほかの部分にも目が行くというわけで。
さすがに世界的なオーケストラだけあって、レベルが高いというのが全体的な印象である。出すべきところできっちり音が出ているし、引き際も鮮やか。そのせいで音が非常にクリアに聴こえた。オーケストラ全体のバランスも申し分なし。何度も音楽に引き込まれてしまった。気持ちいい!
テミルカーノフについてちょっと調べてみると、どうも熱血指揮者として有名らしい。でも今回はそんな『爆演』って感じではなかったような気がするなー。盛り上げるところはしっかり盛り上げてくれたけれども。あと、どうやら指揮棒を使わない指揮者でもあるらしい。しまった。観てなかった。
アンコールは2曲。最後はさすがにくだけた演奏になったがそれもまたよし。おなか一杯になりました。終演後に売店でお買い物をしていたのは楽団員なんだろうか。気になりますなー。