ふたつの思考法の対立とその上手な解消法に向けて

さて、上の文章で最近仕事で苦労している、と書いた。あんまり具体的なことは書けないが、新しいシステム作りをしているとでも思っていただければいい。



そこで色々難儀しながら思ったのだけれども、どうも人の考え方にはボトムアップ式とトップダウン式のふたつに大雑把にわけることができるようだ。ボトムアップ式はまず各論を重視し、対してトップダウン式はまず総論から入る。たとえば新製品の企画を立てる際に、ボトムアップ式の場合は製品仕様や広告宣伝の手法などの細かな部分をひとつひとつ積み上げていくアプローチを取る。対してトップダウン式の場合はそもそもの製品コンセプトがなにか、というところから入っていく。
ボトムアップ式の考え方の問題点は各論にこだわりすぎて全体を見ることを忘れ、視野狭窄に陥ることが少なからずある、という点だろうと思う。細部にこだわりすぎるあまり、いつのまにかそもそもの目的である「良い(売れる)製品を作る」ところから逸脱してしまうことがあるのだ。マニア気質の人にこういうタイプが多いような気がするが、「仕様を決めるために製品を作ってるんじゃなかろうか」となってしまいがちなのが欠点である。手段が目的化するとでも言うのだろうか。
さて、対するトップダウン式の場合は、抽象論に固執していつまでたっても具体的なプランに落ちていかない傾向がある。「そもそも〜というのは」というのが口癖である人がこのタイプに多く、放っておくといつまでも理想論を語っている。抽象概念をいじくるのが得意なのでパっと見にはなんだか頭がいいように見えるのだが、じゃあ実際になにか具体的なものを生み出したのかというと、全然そうじゃなかったりする。
というわけで至極大雑把に書いてみたが、どっちが優れているのか、という話がしたいわけではない。要は適材適所なのである。ボトムアップ式なら、たとえば既存の製品の問題点を改善するというような仕事に向いているだろうし、トップダウン式ならコンセプトやビジョンを掲げる仕事に強い。

けれども実際に新製品を生み出す、というような「なにか新しいモノを作る」場合はそのどちらか一方だけではダメなんだろう。ここではまず大まかなアウトラインの設計があって、それを実際の作業にブレイクダウンし、さらにはそれを実施する必要がある。限られた時間と予算の中でスタートからゴールまでを駆け抜けなければならない。そこには考え得るすべてプロセスが詰め込まれている。
そこで問題になるのは、たいていの場合アウトラインと実作業との間に生じるギャップなのではないだろうか。これはトップダウン式とボトムアップ式の対立と言い換えることもできると思う。新製品を作るという場合であれば、トップダウン式の考え方をするスタッフがコンセプトをまとめ、ボトムアップ式の考え方をするスタッフが実際そのコンセプトを実現すべく手を動かす。そこまでは適材適所、という考え方でいいはずだ。
だがコンセプトから実作業に至るまで、なんの障害もなく進むということはまず考えられない。両者の意見は必ずどこかで対立する。コンセプトが実情に合っていないのかもしれないし、実情を勘案しすぎるともともとのコンセプトを根本的に見直さなければいけなくなってしまうかもしれない。
大体の場合はコンセプトという総論がまず先に決められているので、これは「総論賛成各論反対」という問題として浮上してくる。そして「あいつらはこの新製品のコンセプトが全然わかってない」「あいつらは現場の実情ってやつが全然わかってない」と、各々が相手の無理解を嘆く。実際にはこれが企画部と技術部の対立であったり、経営者と現場の対立であったりする。

このふたつの立場の差から生じる対立はおそらく不可避なものだと思う。むしろそのエネルギーのぶつかり合いによって生まれる火花こそが、ゼロをイチにするような作業においては本当に必要なのかもしれない。けれども実際の場面においては、この対立が単なる相手の問題点のあげつらい、罵りあいになってしまうことが少なくないように思う。
そこで「すごい会議」ができればなあ、と思う。問題点を指摘するだけではなく「こうすればできる」と言うことによって、否定ではなく提案を行うことができるようになる。その提案が仮に無理なモノだったとしても、その返し方として「これはムリだが、こうすれば可能だ」とできれば、どんどんお互いの距離は縮まっていくはずだ。何度もそのやりとりを経ることによって、現実的な妥協案というものが見えてくると思う。単に双方の意見の中間点を取るという機械的なやり方でなくして、議論によって落としどころを探ることが可能になるというのはとても大事なことだと思うのだけれども。

そうはいってもなかなか現実にはうまくいかないんだよなあ。何度も「否定するんじゃなくて、どうすればいいのかを教えてくれ」と言っても次の会議ではそんなこと綺麗さっぱり忘れられてるし。自分でやるのはまあ簡単だけど、それを誰かに伝えるのって難しいなあ。
まあため息ばっかりついていても仕方がない。多分自分のやり方にまだ改善すべきところがあるんだと捉えてもうちょっと色々考えてみましょう。やっぱり「どうすれば可能になるのか?」を紙に書いてもらった方がいいんだろうなあ。最初はメモタイプの付箋とか使って、可能な限り敷居を低くしてみたほうがよいかも。むー。