お高いイヤホンを買う

iPod nanoを発売日(2005年9月8日)直後に購入してから約半年が経ちました。購入直後にiPodのイヤホンは音質が今ひとつ……という話を聞きまして、いくつかのイヤホンを試してみたものです。
しばらくはSONYのMDR-EX51SPで落ち着いていたのですが、毎日の通勤で結構ハードに使ったせいでイヤピースがぽろぽろ落っこちるようになってしまいました。朝起きて身支度を調え、さあ朝日の中を出かけよう。胸ポケットにはiPod!とか思ったらイヤピース無しのイヤホンを耳にぶっさしてぎゃあ、とか驚いてしまうのです。腹立つ。
イヤピースくらい買えばいいじゃないか、と至極もっともなことも当然考えました。しかし一度気になるといろいろなことが気になってきてしまいます。しまうときにiPod本体に巻きつけ続けたコードのヘタり具合も、今となってはもう許すことができません。というわけで新しいイヤホンを購入することに。どうせならちょっと良いものを買おうかなーと目論みつつ、秋葉原のヨドバシを物色してみました。
そこで見つけたのがPanasonicのRP-HJE70。9,800円の13%還元で実質8,091円。Amazonだとほぼ同価格ですね。色はレッド。ヨドバシ限定色とかポップに書いてました。
これ、正直かなりお高い買い物だろうと思います。おそらくイヤホンごときにそんな金などかけていられるか、という方が大半なんじゃないでしょうか。イヤホン単体であれば1,000円弱のものだってあるわけですが、そもそも最初から付属しているものをわざわざ買い換えること自体に抵抗を感じるという向きもあるでしょう。その感覚もわからないではありません。別にみんながみんな音質にこだわるってわけでもないでしょうし、それなら聞こえればいいよってのもひとつの有力な選択肢です。
とはいえせっかくだからいい音で聞ければそれに越したことはないというのもまた人情。1万円弱といえば常軌を逸している感がなきにしもあらずですけれども、実際にはあまり悩まずにさっくり購入してしまったのでした。おそらくそのすぐ隣でSHUREのE5C-Jが54,800円というクレイジーな価格をつけられていたために、金銭感覚が狂ったのでしょう。
悪いのはみんな自分以外の誰かのせいです。



というわけで実際に1週間ほど使ってみましたのでその感想を少々。
モノとしてはアルミ製のしっかりした作りになっていて、なかなか高級感があって好感が持てます。手にしたときのひんやりとした感触がいい感じですね。装着感についてはAmazonのレビューでも指摘されているのですが、やや耳からはずれやすいかも、という気がします。ただ、私の場合はイヤピースを小さいものに換えてからは随分よくなりました。通勤時に使う程度の用途であれば、ほとんど問題は感じません。もっともジョギングしながらなどのハードな使い方だとやっぱり外れやすそうだなあ、とは思います。コードは0.5mでこれはさすがに短いですが、胸ポケットに入れる分には問題なしです。それよりは延長用のケーブルがむやみやたらと長すぎることの方が気になります。なんか極端だなあ。
で、肝心の音質の話。購入して早々、取るモノもとりあえずiPodに装着して聞いてみたのですが__こりゃすげー!と一瞬にして思わせられました。あちこちのレビューを見てみるとエージングが必須とか書いてあるんですが、いきなりの実戦投入でも私の耳にはかなりのインパクトが!なにせ低音も高音もしっかり聞こえるのに決してうるさすぎることがない。これは特に高音部でのスネアの音やヴォーカルにおけるサ行の擦過音で顕著で、おかげで聞いていてストレスを感じることが非常に少ないです。
さらには高音、低音だけではなく、全体的に音が非常に鮮明に聞こえます。ボリュームを絞ってもしっかり聞こるのです。インナーイヤー型ならではの遮音性の高さということもあるのでしょうが、それを言ったら今まで使ってたMDR-EX51SPだってインナーイヤー型です。にもかかわらずRP-HJE70だとボリュームをMDR-EX51SP装着時の2/3程度に絞っても同じ程度の音量だと感じるのです!最初は今までと同じ感覚で鳴らしてしまったのであまりの音のデカさに鼓膜がやられるかと思いましたよ!すごい!

__というわけで、RP-HJE70は個人的には非常によい買い物でありました。その後、思いつきでMDR-EX51SPを使ってみたんですが、どうしても音のチープさが耳に付いてしまう。じゃあiPod標準のイヤホンではどうか__と試してみると、今度は聴いているのがツラくなってしまいました。そんなに長いこと使っているわけではないのに、耳の方はしっかりRP-HJE70用にセットされてしまったんですね。
考えてみればこれはとても恐ろしいことです。使い続けていくうちに耳はすっかりその音に慣れ、それを当たり前だと感じるようになり、結果として新鮮な驚きは時とともに薄れていってしまいます。また同じ感動を味わいたければさらによいイヤホンを買わなければならない。そしてさらによいイヤホンはさらにお高いのです。きっと2万とか3万とか5万とかします。実は折りたたまれた万札でも入ってんじゃねえのか?正直やってられません。
このようなエクスペンシヴ=スパイラルに陥るのは、主に経済的な理由からやはり避けたいものです。だとすれば時々はiPodの標準イヤホンで音楽を聴いてみるのがよいのかもしれません。そうすれば自分がどれだけゼイタクな環境に浸っているか、身をもって知ることができるでしょう。折に触れて自らの立ち位置を確認するというのはとても大事なことです。
というわけで、新鮮な感動を味わうために一度はよいイヤホン(2,000〜3,000円のイヤホンでも標準よりは充分いい音です)で音楽を聴いてみることをおすすめしつつも、標準のイヤホンも大事に取っておいた方がよいのではないか、というご提案をさせていただきます。多分そこそこ現実的な提案なんじゃないかと思いますけど、どんなもんでしょう。ときどきはわたしのことも思い出してください__iPod標準イヤホンのそんなささやきが聞こえてはきませんでしょうか。
私にはさっぱり聞こえません。危険だ。

SONY MDR-EX51LP/R 密閉型インナーイヤーレシーバー レッド

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