ゲームメーカーはレンタルではなく、中古販売に乗り出すべき

ゲームのレンタルですか……今ひとつピンとこないなあ。ということで色々考えてみたのですが、やっぱりこれはどうなんだ、ということになってしまったのでずらずら書いてみます。いまどき中古vsゲームメーカーって話でもないんじゃないの、それだったらいっそのことメーカーが中古販売に乗り出しちゃえばいいじゃん、というお話しです。



これ、元々は「ゲームレンタルの「RentaNet」 - 新作はまるで貸す気なし?(デジモノに埋もれる日々)」経由で知った記事でした。とりあえず読んでみた感想としては、やはりこちらでも言われている通り、価格設定がちょっと、というものです。

レンタル料は未定だが、ビデオレンタル同様に新作(発売後1〜3カ月程度)、準新作(発売後3カ月〜1年程度)、旧作(発売後1年以降)の3段階を想定。新作の1カ月レンタルなら定価の8割となる5000円強、9泊10日で2700円程度、準新作は4泊5日で900円程度、1カ月で3700円程度、旧作なら500円以内を目安としている。

なんだそうですが、むう。レンタルということだとすでにDVDやCDという分野があるわけですが、そこと比べてもどうなのかという気がします。もちろん商品の性質が異なりますので一概には言えませんが、せいぜい300〜500円/本が借りる側のフトコロ感覚としてはいいところなんじゃないでしょうか。つーか5,000円払って一月しか遊べないなら新品を買って満足するまで遊んだら中古ショップに売りに出す方がいいと思います。仮にその方が若干高くついたにせよ、返却日という〆切に追われながらゲームするなんてイヤですし。
他にも

襟川名誉会長は、ゲームレンタル市場は2008年に1500店舗・900億円規模になるとし、「これは固めに見積もった。本当に利便性を追求するなら、全国に1万5000店舗は必要」などと強気の見方を示した。

なんて話もありますが、この見積もりの根拠ってのもよくわかりません。またDVDレンタルの話を引っ張ってきますが、社団法人日本映像ソフト協会(JVA)がつい先日「『映像ソフト及びAV機器の消費実態に関する調査』について」という発表を行っています。そこで示されているレンタルDVDの市場規模は2,524億円。レンタルVHSの1,054億円と合わせると約3,500億円と見られているわけですが、これは長年に渡る蓄積があってこその数字だと言えるでしょう。
さて、翻ってコーエープレスリリース(PDF)を見てみましょう。

「RentaNet」を展開することにより、ユーザーの皆様の利便性を高め、新たな市場を創出いたします。

と書かれています。「新しい市場の創出」ということから、現時点でゲームのレンタルという市場はほとんど存在していない、と推察されます。そこからわずか2年で900億円規模にまで成長する、というのが「固めの見積もり」とは、私にはちょっと思えない。
本当に大丈夫なのかなあ。
もっともこのような事業を立ち上げたおおもとには「中古市場はゲーム市場の43%以上を占めているにも関わらず、クリエイターやメーカーに利益が還元されない」という問題意識が働いているわけです。そこについては私にも異議はありません。ゲームの中古販売に関する問題はずいぶん前から取りざたされていて、なかなか根深いものではありますが、人の褌で相撲を取りやがって__というゲームメーカーの言い分はそれなりに頷けるものです。
ただなあ、それを解決したいんだったらなにもレンタルなんていうまだるっこしい手法を取らなくてもいいんじゃないの、とか思うんですけど。問題はあると言いつつも、ゲームの中古販売については既にそれなりの年月の蓄積もあってユーザーに浸透しちゃってるわけです。さらには法的にも合法という判決が最高裁で下っている*1
こんな状況の下で、今さら中古販売を排除しようったってそれは無理でしょう。だとすればわざわざ新たなビジネスモデルを立ち上げるというリスクを冒してまで、中古販売に戦いを挑むメリットってのが果たして存在するのかどうか、正直そこから疑問だったりします。
それだったらいっそのことゲームメーカーが中古販売に乗り出しちゃえばいいんじゃないの、とか思うんですけど、どうなんでしょうね。そのための手段として買収なのか提携なのか、あるいはまったく新規の事業立ち上げを取るのかはあるでしょうが、少なくとも既存のノウハウが使えるという点において、こちらの方がよほど現実的な選択なんじゃないかという気がします。
もちろんこれまでの経緯もありますから、まるで白旗をあげるかのようなやり方に心理的な抵抗があるだろうということは想像に難くありません。でもなあ、やっぱり今さらゲームメーカーvs中古販売という図式は成り立たないでしょう。そこに様々なリソースを投入してしまうことにメリットがあるとは、どうしても思えないのです。
ゲームってのは古くなったから劣化するって類の製品ではないわけで、それであれば今のような一度売ったらおしまいというやり方が効率悪いのは確かです。でも商品の市場投入について新品販売とレンタルという二つのチャネルを持つよりも、チャネルは新品販売に一本化した上で中古販売を公認して、リサイクル(リユース)ループを作っちまう、ってやり方のほうがわかりやすくていいんじゃないかなあ。そこにメーカー自らが乗り込むことによって「クリエイターやメーカーに利益が還元され」るようになるんじゃないかと思うんですけど、どうですかね。