トンデモクラシック音楽「大序曲1812年」

チャイコフスキーといえば18世紀の偉大な作曲家のひとり。「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」などなど、有名な曲を多く残しています。いかにもロシアって感じの曲調で、ずっと聴いているとだんだん気が重くなってきますが、たまに無性に聴きたくなることがあるという感じでしょうか。
で、先に挙げたような有名な曲とはちょっと違った意味で有名なのが「大序曲1812年」。曲想はナポレオンのロシア遠征__ロシアでは「祖国戦争」と呼ばれているそうで__にあるそうですが、一度は首都モスクワを占領されながらも、最終的にはナポレオン率いるフランス軍を敗走に追い込んだ戦いということになります。その経緯からロシア愛国主義の象徴ともされているんだとか。
この戦争はナポレオン没落のきっかけとしても有名で、近代史を振り返る中で様々な描き方をされる戦いでもあります。フランス軍ポーランド侵攻に端を欲する開戦直後、敗走を繰り返すロシア軍が撤退時に街に火を放ってフランス軍の略奪(及びそれによる補給)を防いだだとか、果てはモスクワに居座るフランス軍を退却させるために、首都にまで火を放っただとか。いずれも真偽のほどはさだかではありませんが、自らの領土__さらには首都にまで火を放つというのはなかなかにドラマチックです。火炎と黒煙にさらされて赤々と照らされる我が祖国!涙なしには語れますまい。でもって最後は逆転勝利って結末が待ってるわけですから、愛国心をあおる物語を作るには格好の材料といえるでしょう。



それはともかくとして「大序曲1812年」のお話。この曲がなんで有名かというと、それは楽器としてとんでもねーものが使われているからです。ま、ご紹介した記事のタイトルに答えが書いてますけどね。大砲です。いやそれ楽器じゃないだろって感じですが、実際にそうなっちゃってるんだから仕方ない。曲そのものの評価は決して高くないようですが、それほど長くもなく、勇ましい曲調もあいまって個人的にはけっこう好きだったりします。とりあえず退屈はしない。
CDも何種類か出てますが、実際には大砲のかわりに太鼓が使われていることも少なくありません。そりゃまあたとえ空砲を使うにせよ、コンサートホールなんかでそうそう大砲をぶっ放しちゃいられないでしょうしねえ。でもって、もちろん大砲を使っているらしき録音もあります。私も一枚持ってますけど、なんつーかまあ、思わず笑っちゃいそうになりますよ。クラシックのCDで笑いそうになるなんて、そうそうあるもんじゃないです。これは貴重。これがまたどかんどかんと結構連発するんですよ。で、そのたびに録音レベルを超えちまってガサガサと音が乱れる。大受け。ゲラゲラもんです。

というわけでこの20日(土)に開かれるコンサート、なかなか興味をそそられる催しなのです。実際には4門の105ミリ榴弾砲(りゅうだんほう)を用いるそうで、迫力たっぷりな演奏になってくれることでしょう。ちょっと時間的に都合がつかないかもしれないのが残念なんですが、うーん、一度ナマで聴いてみたいもんだなあ。