昏君

学生時代は歴史がキラいでキラいで仕方がなかったんですが、ここ最近は歴史関係の本も少しずつ読むようになってきてます。年をとると趣向が変わるというのは食べ物だけに限らないようで。
 ただ、個人的にはローマ帝国よりもギリシア時代の方が好きです。ギリシア時代には(科学を含む)哲学の芽生えがあったというのがその理由なんですが、ローマ時代にはその面における進展はほとんどなかったわけだし。ローマ時代は道路建設などの実用的な学問に重きが置かれてたんですね。その後、こと科学においては近世になるまで暗黒時代が続くんですが。

ただ、政治劇はやっぱりローマ帝国時代の方が盛んです。

この本では6人の『愚帝』を取り上げ、伝記風のまとめでその治世について紹介しています。キャストはネロをはじめ、いずれ劣らぬ悪名高き面々。現代との常識の違いはもちろんあるわけですが、それにしたってまあ、というエピソード続出です。賢帝の話をするときにありがちな説教くささなんてあるわけがありません。悪行のスケールのデカさに脱帽、といった感じ。

また、最終章では幾人もの愚帝を輩出しながらローマ帝国が揺るがなかったのはなぜか、という考察もあり、単にスキャンダル話をするだけにはとどまりません。愚帝は本当に愚帝であったのか、という問いをはじめとして、ところどころに見られる作者独自の視点による考察も面白いです。すでにあちこちで取り上げられてはいますが、それもなるほどといった感じですね。