相対評価

いずれも社団法人 著作権情報センターのQ&A内の記事です。

ここ数日色々なところで「産経新聞が『個々の記事への無断リンクはやめろ』と警告を発した」件についての話題が取り上げられてます。著作権法ってのもインターネット(WWW)の普及で一気にグレーゾーンな話が増えてしまった法律ですね。産経新聞の真意が「直リンクだとバナー広告を見てもらえないじゃないか!」ってとこにあるんじゃないかって話もありますけど、まあそれはさておき。

で、今回紹介した記事ですが、まず初めは「直リンクは著作権違法にあたらない」という見解を示すものです。今回の産経新聞の行動に疑問を呈するものとしてよく引用されてました。そしてもうひとつの方は「フリーウェアは著作権を放棄しているのではなく、その行使を留保しているものだと捉えるのが妥当」との見解を示すものです。これ、一時期フリーウェア開発に携わる人たちの間でさんざんブっ叩かれたような記憶があるんですよね。特に

……無償とすることによってこのソフトを広く普及・伝播させ、費用の回収および収益の獲得はバージョン・アップの際に有償にしようと図ろうとしている場合が多いと考えられます。……

というあたりが槍玉にあがってました(現在、該当部分は「〜している場合もあると考えられます」となっています)。

いや、大した話じゃないんですけどね。時と場合によって、同じ団体が市井のユーザーの味方とされたり、まったく無理解で失敬な輩とされたりするんだなあと思っただけの話です。もちろんこの二つの事例において意見を発している人の層がどれだけ重なってるかなんてわかりませんから、それぞれで評価が異なるなんてのはごく当たり前の話でしかありません。結局評価ってのは時と場合、人によってころころ変わる相対的なものでしかないんですね。当たり前すぎてかえってつまらない結論ですけど、それを示す例としてはわかりやすいんじゃないでしょうか。ともかく二つの事例において下された評価のコントラストがすごくはっきりしていて面白いなあと思ったわけです。


で、直リンク/無断リンクの件については現時点でこれといった判例もなかったかと思います。したがってこれについては色んな人、会社がそれぞれの解釈を言い合ってるだけとも言うことができる。はっきり決着をつけたければ法廷闘争に持ち込めばいいんでしょうけど、一個人のニュースサイトでそんなことやってられないでしょう。個人vs組織ってのは、特に裁判の場合、それに要する時間、費用、精神的負担などがあいまって個人にものすごく不利なものになっています。だからなかなか裁判で白黒つけるところまでいかず、曖昧とした状態が続かざるをえないという面がある。

といってもわざわざそんなことまで法令で定めるのか?って気もするんですけどね。それだけインターネット(WWW)の存在が大きくなったことの証でもありますが、なんでもかんでもお上の判断を仰ぐってのは長い目で見て自分の首が絞まることにも繋がりかねないので、私はそうしてほしいとはあんまり思いません。「リンクフリーは自明」とまで言うほどきっちり調べ上げてるわけでもないですが、とりあえずは「リンクは張るもはずすも自由」って態度を取ろうと考えてますけどね。

でもって現時点で個人にできるのはゲリラ戦かな。今私がやってるのはまさにこれでして、こっそりこっそりあちこちにリンクを張りまくっております。なんかちまちました方法ではありますけどね。そうでなければユーザー団体を作って組織vs組織の構図に持ち込むという道もあるかもしれません。それなら裁判なる正攻法を選択することもできるようにもなるでしょうし。

いやはや、個人ニュースサイトってのも楽しいばかりじゃなさそうです。今回の件は「連邦」さんと「ポケットニュース」さんが噛み付かれたようですが、「今日の必ずトクする一言」さんも休止するとのことですし、大手ともなると色々大変なのかもしれません。ここはひとつ、自らもって「かすけき通信」とでもするのがいいんでしょうか。


(参考:フリーソフトウェアにおけるライセンスの意義/YAMDAS Project)