シネマの海(カルロス・ヌニェス)

スペインはガリシア地方におけるケルト音楽のパイプ奏者、カルロス・ヌニェスの新作。
カルロス・ヌニェスには以前から物語的な広がりのある音楽性を感じていたのだが、本作ではますますそれが強まったと感じた。アランフェス協奏曲やボレロゴッドファーザーのテーマなど、聞き慣れたはずの音楽がとても新鮮に聞こえる。ガイタをはじめとするパイプ達も、トラッドとはまた異なる新たな息吹を吹き込まれたかのように伸びやかな音を奏でてくれている。この人に関してはもはや「トラッド」の言葉は似合わないとさえ思う。
もちろん映画「海を飛ぶ夢」から収録の新曲も充実のデキで、価格以上の価値は充分にある。特に4曲目のアメナーバルは「ハリウッド風のケルト音楽」と本人が称した通りのドラマチックな旋律がたまらない。今年の来日コンサートでもこの曲は実に盛り上がっていた。
早くも次作を、しかも完全オリジナルで……と期待してしまいたくなる作品。