Web2.0を必要とする人

梅田望夫氏のBlog。
深くなるほど、と思ったのはWeb2.0が「理論武装」だというあたり。
以前ヨタった時に、つらつらと文章を書きながらも「Web2.0を誰が必要とするのか?」と思っていたのだ。
具体的な技術ではない、概念的な存在であるWeb2.0という呼び名は、サービスを利用する立場のユーザーには必要ないだろうし、実際に個々のサービスを実装する立場にある技術者にもそれほど必要ないのではないか。この考え自体は今でもそれほど変わらない。もちろん知っているにこしたことはないだろう。けれどもユーザーが選択を行う際に重要なのは、そのサービスが自分にとって必要なのか、便利なのかということであって、Web2.0かどうかではない。技術者が実装をする際においても、そのサービスがWeb2.0かどうかで実装方法が変わるということもないだろう*1
けれども

加えてオライリーをはじめとする論客による「Web 2.0」つまりネットの次世代ビジョン仮説に関する理論武装も固まってきたことで、ネット周辺でのベンチャー投資意欲、ベンチャー起業意欲も久しぶりに高まりを見せている。ブログ上での真剣な議論も続き、質の高い内容のエントリーもまた増えてきている。

ここを読んでみて自分に欠けていた視点に気がつかされた。この概念を必要とするのはユーザーでも技術者でもない。Web2.0が本当に必要なのは起業家であり、経営者だったのだ。さらに言えば彼らがベンチャーキャピタル(BCVC)等から資金調達をする際に必要な説得を行うためにWeb2.0という概念が必要となるのだ。
今現在、ユーザーにもっとも受け入れられている、あるいはその可能性を感じさせるサービス群を分類し、分類名を与え、その概念を深めながら理論武装を行うことによってどのようにBCVCを説得するかのスキームが組み立てられようとしている。この世でもっとも生々しい上に切実な「どうやってカネを持ってくるか?」の話なんだから、議論が盛り上がらないわけがない。なるほどこれは単にメタ的な話などではなく、しっかりと実利に根ざした上での話だったわけだ。
しかるに梅田氏は翻って日本の現状を

日本のネット列強の中に一社も、ネット進化の新しい方向性を体現する戦略を取ってやろうという会社がいないのが寂しい。

としている。ふーむ。まあ日本の現状について、BCVCの存在感が薄く、離合集散を繰り返しながらも、その実旧態依然たる銀行って図式だと捉えるとそういうことにならざるを得ないかも。
結局日本ってまったくのゼロからなにかを作り上げることが苦手なんだとしか言えないのだろうか。かつてのJapan as No.1の時代にだって「モノマネ猿」と揶揄されていたわけだし、iTMSという黒船の来襲を受けてようやく動き出した音楽業界を見てみると考え込まざるを得ない。結局歴史が繰り返されようとしてるんじゃなかろうか?つまりある程度そのサービスの成否が明らかになった時点から参入し、ハイレベルな洗練を行うことによってトップの座を取りに行くという、後の先の戦略を日本企業はまた取ることになる(あるいは取らざるを得なくなる)のではないか、ということだ。
けれどもビジネスの流れがとてつもなくスピーディになった*2現代において、そんなことが果たして可能なのかどうか?
その疑問に応えを出し、舵を切ることがBCVC、銀行などの投資家の役割だろう。それによって日本のネット産業の進む方向性も変わってくる。
少なくとも「Web2.0?なんですかソレは」と言ってしまうようでは話にならないんだろうけど……さて、日本の現状はどうなんだろう?
まあ私の耳が遅いだけなのかもしれない。つーか技術者でも起業家でも投資家でもないんだから遅くて当たり前なはずなんだが。

*1:というか、実装段階ではそのサービスがWeb2.0か否かはすでに決定している

*2:3年前に実現されていたWebサービスとそのトップランナー。そしてその後のブラッシュアップは誰が行ったのかを考えてみると面白そうだ