サナトリウム

今までサナトリウムといえば結核療養所のことだろう、と思っておりました。ところが「モモ」を読んでいる途中で、どうやら精神病院という意味でサナトリウムという言葉が使われているのを発見。あれー、とか思いました。というわけでいつものようにGooの国語辞典で調べてみます。

サナトリウム
[sanatorium]
療養所。海浜・高原などの閑静で日当たりがよく空気のきれいな場所に建てられ、慢性病、特に結核患者の療養を目的とする施設。

……というわけなので特に結核療養所のことを指すわけではないらしい。ではなにゆえに結核療養所のイメージを抱いてしまったのかというと、それはかつて『サナトリウム文学』と呼ばれるジャンルの小説があったからなのではないかと思いました。時代としては大正時代から昭和の前半。結核が国民病と呼ばれ、よい治療法もなかった時代のことです。

サナトリウム文学の主な作品としては亜堀辰雄の『風立ちぬ』福永武彦の『草の花』があげられます。と言いつつ、実はどちらもまともに読んだことがないんですけど。確か『風立ちぬ』は文庫を持ってたような気がするんだけどなあ。

結核といえばなんとなく容姿端麗で線の細い人がか細く咳き込む、というようなイメージがあります。もろいガラス細工のような美しさをそこに感じてしまうことさえあるかと思うのですが、それはあまりにも美化しすぎというものでしょう。現在でも世界で年間約200万人が結核によって亡くなっており、その原因のひとつにHIVによる免疫力の低下があるんだとか。その犠牲者のほとんどは、なかなか十分な治療を受けることのできない開発途上国と呼ばれる国の人々というのが現実です。その前では、私の抱いていたイメージなどガラス細工以上にもろいものでしかありません。

日本でも数年前に結核患者が増加に転じ、厚生省(現厚生労働省)が『結核緊急事態宣言』が出されたことがありました。その後患者数は再び減少しているそうですが、それでも全国で4万人近くの結核患者がいることには変わりありません。実際には適切な治療を受ければほぼ確実に治るので、問題は怪しいと思ったらすぐ病院に行くということに尽きるようです。(参考:結核予防会)

うーん、なかなか侮れないもんだなあ。幸いなことに私自身や周りにも結核にかかったという人はいないんですが、そのせいでどうにも現実感のわかない話であることもまた確か。普段の健康管理が大事とはいえ、やっぱり健康なときにはその本当の価値はわからないもののような気がします。

とりあえず堀辰雄をそのうち読んでみることにしよう。