ロシアン・ブラス

サンクトペテルブルグ・フィルの5人によるロシアン・ブラスが札幌を手始めに全国7箇所を巡るコンサート。サンクトペテルブルグ・フィルは去年の10月に聴いているのだが、そのときのプログラムにも「展覧会の絵」があった。今回はブラスで、ということで趣は違うがそのあたりが楽しみ。
そして開演。演奏が始まる前にすでに驚かされる。原因はトランペットのイーゴリ・シャラポフ。デカい!身長はそれほどではないのだが、ご立派な胴回り__というかハラ。典型的なロシア人のおっさんここにあり、という感じで迫力満点である。なにを食っていたらあんなにデカくなれるのだろうか。あそこまでデブデカいとダイエットなどは思いもよるまい。いっそすがすがしいくらいである。
とまあそんなところで驚いていても仕方がない。しかしながら演奏が始まってまた驚いた。音がぜんぜん違う!ゆえあって最近はブラスの市民バンドあたりの演奏を聞くことが多かったのだが、同じブラスでも素人の耳ではっきりわかるもんなんですな。音がクリアで、非常に響きがよい。基礎体力がまるきり違うのが音色に如実に現れてます。まあ比較するのもアレではあるが、ヴィルトゥオーソ(virtuoso)の名に偽りはないと思わされる演奏はさすが。イーゴリ・シャラポフにしたってサンクトペテルブルグ・フィルの主席演奏者なのだから、ただ==デブ==デカいだけと侮ってはいかんのである。
で、「展覧会の絵」といえばラヴェルオーケストレーションによるものがもっともポピュラーだが、今回はどうやらそれとはちょっと違って、ムソルグスキーの原曲により近いアレンジがなされているのだとか。原曲はピアノ曲なんだが、実際聴いてみても違いはよくわかりませんでした。とほ。ピアノ版のCDも持ってることは持ってるんだが、録音状態がよくないのであまり聴いてないんだよなあ。ともあれ、そのあたりは知らずとも十分に聴き応えのある演奏だったのには違いがない。特にオーケストラと同じパートの演奏はさすがに見事。
後半部もポピュラーな楽曲が多く、飽きるところはない。ところどころにある細やかな音も粒が揃っていて圧倒されます。どうやったらこんな風に吹けるんだ?実際にブラスの経験のある人ならもうちょっと違う感想を抱くモンなんでしょうが、まるきりの素人ではこんな程度です。とにかく「すげー」の連発です。なんともボキャブラリーの貧困なことで、とても解説者にはなれませんな。
そしてここまで書いておいてアレだが、実はもっとも盛り上がったのはアンコール部分だったりする。実は3部構成のプログラムなんじゃないのか?というくらいにたっぷり用意されていて、随所で観客を引き込んでくれるあたり、ただ堅苦しいだけじゃない。最後にはなぜか4人で演奏が始まり、おや?と思わせたら「シャラポフ!」の呼び声でイーゴリ・シャラポフが女装で登場。しかし真っ赤な服をお召しになったその姿はまるでサンタクロースである。これには場内大喝采。皮切りの公演だし、体力にもまだ余裕があることの表れなのかもしれないが、実に楽しませていただきました。A席4,000円なら実にいい買い物だといえよう。ちなみに今後の予定を最後に書いておく。

  • ムソルグスキー組曲展覧会の絵
    • プロムナード
    • 第1曲:こびと
    • プロムナード
    • 第2曲:古城
    • プロムナード
    • 第3曲:テュイルリーの庭
    • 第4曲:ブィドロ
    • プロムナード
    • 第5曲:殻をつけた雛の踊り
    • 第6曲:サミュエル・ゴールデンベルグとシュムイレ
    • プロムナード
    • 第7曲:リモージュの市場
    • 第8曲:カタコンブ −死せる言葉による死者への語りかけ
    • 第9曲:バーバ・ヤガーの小屋
    • 第10曲:キエフの大門

(休憩)

(今後の公演予定)